- 2013年04月03日
- 大鵬薬品工業株式会社
進行膵癌を対象としたTS-1臨床第Ⅲ相試験(GEST)結果がJournal of Clinical Oncology電子版に掲載
大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、代表取締役社長:小林 将之)が試験依頼者となり、国内で実施された進行膵癌を対象としたTS-1臨床第Ⅲ相試験(GEST*)結果が、がん研究領域の主要雑誌である医学誌 Journal of Clinical Oncology電子版に掲載されましたのでお知らせ致します。 * GEST:Gemcitabine and TS-1 Trial
GEST試験は、日本と台湾の共同試験であり、切除不能進行再発膵癌の患者(834名)を対象とし、ゲムシタビン単剤で治療する群、経口抗がん剤であるTS-1単剤で治療する群と、TS-1とゲムシタビンを併用して治療する群の3つの群に割り付けて、全生存期間を主要評価項目として試験を実施しました。その結果、全生存期間において、TS-1とゲムシタビンの併用群(中央値10.1ヵ月)がゲムシタビン群よりも優れていることは統計的に証明されませんでしたが(HR=0.88, p=0.15)、TS-1群(中央値9.7ヵ月)はゲムシタビン群(中央値8.8ヵ月)に対して非劣性である事が示されました(HR=0.96, p<0.001)。なお、本試験の臨床第Ⅲ相試験の結果は、第47回 米国臨床腫瘍学会(ASCO 2011年)等で報告されました。
【ティーエスワン(TS-1)について】
フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤であるティーエスワンは、吸収後、抗がん剤フルオロウラシル(5-FU)に変換される代謝拮抗物質のテガフール、体内で5-FU の分解を阻害するギメラシル(5-chloro-2,4-dihydroxypyridine,またはCDHP)、消化管で5-FU のリン酸化を阻害するオテラシル(Oxo)の3化合物の配合剤です。胃がんの治療薬として開発され、1999 年に国内で最初に承認されて以来、胃がんの標準治療薬となっています。日本においては、他に結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌の6つの追加効能を取得しています。海外では、アジア(韓国、中国、シンガポール、台湾、タイ、香港)、欧州(スウェーデン、デンマーク、ノルウェイ、フィンランド、イギリス、オーストリア、ドイツ、ブルガリア、オランダ、アイルランド)で販売されています。
【Journal of Clinical Oncologyについて】
2011年のImpact factorは18.372であり、がん研究領域における主要医学雑誌の一つです。
GEST試験の結果概要につきましては、2011年6月8日のニュースリリースもご参照ください。
日本版: http://www.taiho.co.jp/corporation/news/2011/20110608.html
英訳版: http://www.taiho.co.jp/english/news/20110608.html
GEST試験結果の概略
【試験名】
切除不能進行膵癌(局所進行又は転移性)に対するGemcitabine 療法 / TS-1 療法 /Gemcitabine+TS-1 併用療法の第Ⅲ相無作為化比較試験
【背 景】
切除不能進行膵癌は予後が悪く、有効な治療薬の少ない疾患である。本疾患に対して、より有効な治療法の開発が望まれていた。標準治療であるゲムシタビン単独療法を対照として、生存期間におけるTS-1単独療法の非劣性、ゲムシタビン+TS-1 併用療法の優越性を検証することを目的として、臨床第Ⅲ相試験が行われた。
【方 法】
2007年7月~2009年10月の間に、多施設共同ランダム化比較臨床第Ⅲ相試験を実施した。対象は、化学療法を初めて行おうとする切除不能進行再発膵癌の患者が対象であった。
患者は、ゲムシタビン群(1,000mg/m2 、1, 8, 15日に点滴静注、22日は休薬、28日で1コース)、TS-1群(体表面積に合わせた投与量(1日80mg, 100mg, 120mg)を、1から28日まで連続経口投与、14日間休薬、42日で1コース)、TS-1とゲムシタビン併用群(ゲムシタビン:1,000mg/ m2 、1, 8日に点滴静注、TS-1:体表面積に合わせた投与量(1日60mg, 80mg, 100mg)を、1から14日まで連続経口投与、7日間休薬、21日で1コース)に無作為に割付けされた。治療は試験で規定された中止基準に該当するまで治療薬の投与が繰り返された。
本試験の主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は、無増悪生存期間、奏効率、有害事象発現率、副作用発現率、QOL(EQ-5D)であった。
【結 果】
834例の患者が無作為化割り付けされ、ゲムシタビン群で277例、TS-1群で280例、TS-1とゲムシタビン併用群で277例であった。
全生存期間の中央値はゲムシタビン群(対照群)で8.8ヵ月(95%信頼区間:8.0-9.7ヵ月)、TS-1群で9.7ヵ月(95%信頼区間:7.6-10.8ヶ月:ゲムシタビン群に対するハザード比0.96、97.5%信頼区間:0.78-1.18、p<0.001、非劣性)、TS-1とゲムシタビン併用群で10.1ヵ月
(95%信頼区間:9.0-11.2ヵ月:ゲムシタビン群に対するハザード比0.88、97.5%信頼区間:0.71-1.08、p=0.15、優越性)であった。安全性はいずれの群も認容可能なものであったが、TS-1とゲムシタビン併用群で消化器毒性、血液毒性が強い傾向があった。
【結 論】
TS-1単独療法は膵癌における標準治療であるゲムシタビン単独療法に対して全生存期間において非劣性を証明し、認容性も良好であった。TS-1とゲムシタビン併用群はゲムシタビン単独療法に対して優越性を示すことはできなかった。
*本試験は、ClinicalTrials.govに臨床試験登録された試験である。(NCT00498225)
Hideki Ueno, Tatsuya Ioka, Masafumi Ikeda, Shinichi Ohkawa, Hiroaki Yanagimoto, Narikazu Boku, Akira Fukutomi, Kazuya Sugimori, Hideo Baba, Kenji Yamao, Tomotaka Shimamura, Masayuki Sho, Masayuki Kitano, Ann-Lii Cheng, Kazuhiro Mizumoto, Jen-Shi Chen, Junji Furuse, Akihiro Funakoshi, Takashi Hatori, Taketo Yamaguchi, Shinichi Egawa, Atsushi Sato, Yasuo Ohashi, Takuji Okusaka, Masao Tanaka, for the GEST study Group.
Randomized Phase III Study of Gemcitabine Plus S-1, S-1 Alone, or Gemcitabine Alone in Patients With Locally Advanced and Metastatic Pancreatic Cancer in Japan and Taiwan: GEST Study
Journal of Clinical Oncology, doi: 10.1200/JCO.2012.43.3680
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