頻尿? 病気?
──急にトイレが近くなった女性のその原因を解説

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頻尿? 病気?──急にトイレが近くなった女性のその原因を解説

仕事が忙しいときや、趣味や旅行などでお友達と長く過ごしていると気にかかるトイレの回数。急に増えたりすると「自分だけ?」と心配になりますね。また、「年齢のせいかも」と悩んで、自分で趣味や外出を制限してしまっていませんか。

不意に我慢できない強い尿意が起きる尿意切迫感、短い間に何度もトイレに行きたくなる頻尿、いきなり尿意を感じてトイレに間に合わず尿もれしてしまう切迫性尿失禁の場合は、過活動膀胱という症状の可能性があります。この過活動膀胱の場合にはお薬による治療も可能です。ご自身の症状とその原因を確認してみませんか。

頻尿とは

「頻尿」とは、「さっき行ったばかりなのにすぐまた尿意を感じて、人よりトイレが近くて不便を感じる」「尿意があって何度もトイレに行かなければならず生活に支障をきたす」場合の症状を指します。人によって異なりますが、目安として、朝起きてから夜寝るまでの間に8回以上トイレに行くようであれば頻尿の可能性があります。

急にトイレが近くなる女性の原因とその対策について

頻尿の背景には、様々な要因がありますが、女性の場合、男性に比べて尿道が3~4cmと短く、さらに尿道や膀胱を正しい位置に支える骨盤底筋も男性より弱いため、女性特有の病気や、加齢に伴う女性ホルモンの変化による影響も考えられます。

また、美容のために水分をたくさん摂る方もいらっしゃいますが、その場合は、排尿回数が多くなるのは当然ですね。

頻尿の起きるタイミングを振り返って、健康状態や生活習慣を見直してみるとともに、異常を感じたら、早めに医師の診断を受けることも大切です。

過活動膀胱

頻尿の原因として「尿を貯める膀胱の容量が低下してしまう(膀胱に少しの尿しか貯められなくなる)」がありますが、尿が充分に貯まっていないにも関わらず尿意を感じる原因として「過活動膀胱」という症状があります。

膀胱が異常に収縮することで起こるもので、現在国内で1,000万人超の人に何らかの症状があると推定されています1)

過活動膀胱症状の場合、冷たい水に触れた時や、立ち上がった瞬間など不意に、通常より少ない尿量で尿意を感じるので、頻尿になりやすくなります。尿意切迫感という、突然起こる、我慢できない強い尿意が特徴で、自分でコントロールするのが難しく、尿もれにつながってしまうこともあります。こうした尿意切迫感による尿もれを切迫性尿失禁といい、日常生活で起きるとショックが大きいものです。

このような症状があると、自由にトイレに行けないことの不安から、外出できなくなってしまうことがあります。

もし、過活動膀胱症状にあてはまるようであれば、現在はドラッグストアで買えるOTC医薬品も販売されているので、薬剤師さんに相談してみるのも1つです。

  • 1)本間之夫 ほか:排尿に関する疫学的研究.排尿に関する疫学的研究. 日本排尿機能学会誌 2003; 14: 266–277

過活動膀胱以外の病気

過活動膀胱の他に、頻尿の原因となるのは、膀胱結石や萎縮膀胱、膀胱腫瘍、膀胱炎、神経因性膀胱などです。

また、多尿(尿量が多いこと)によって頻尿となる場合もあります。多尿を引き起こす病気としては高血圧、糖尿病、尿崩症などがあげられます。

これらの病気の治療を受けている場合や、頻尿の症状が悪化している場合は医療機関で相談してみましょう。

骨盤底筋の緩みや内臓脂肪

人は40歳を過ぎたころから加齢によって下半身の筋肉の衰えが現れ始め、それが腎臓や膀胱など内臓の働きにも影響し、頻尿が起こりやすくなるといわれています。

頻尿につながる下半身の筋力の低下対策として、膀胱や子宮を支える骨盤底筋を鍛える「骨盤底筋訓練」があります。骨盤底を支える筋肉の力を鍛える体操を日常的に行うことで、排尿のコントロールにも効果があるとされています。

「膀胱訓練」は、尿意を我慢する時間を段階的に延ばしていくものです。膀胱の尿を溜めておく機能を改善させ、自然にトイレに行くまでの間隔を伸ばすことにつながります。

内臓脂肪も、一定量を超えると膀胱や尿道を圧迫して頻尿をもたらす要因になります。内臓脂肪を減らすことは、多尿の原因となる糖尿病や高血圧の予防にもつながります。

飲食物

利尿作用のある飲食物が頻尿の原因になることも。コーヒーやお茶などに含まれるカフェインやアルコールに利尿作用があるのはよく知られていますが、ワカメやひじきなどの海藻類やアボカドやホウレンソウ、大豆などに含まれるカリウムも利尿作用があります。香辛料や炭酸飲料、柑橘類などの食べ物が刺激となって頻尿につながることも。

また、尿路結石があると頻尿になりますが、尿路結石の原因であるシュウ酸にも要注意。ホウレンソウやタケノコなどの食品のほか、コーヒー、紅茶、緑茶、ココアなどの飲み物に多く含まれます。

身体に良いとされるものも適量摂取が大切です。ご自身で思い当たる場合は、こうした飲食物を控えて様子を見てみましょう。

ストレス

精神的なプレッシャーやストレスでトイレに行きたくなるのは、誰しも経験がありますね。日々の生活の中で、気づかぬうちに疲れやストレスが溜まって、頻尿が起きることもあります。

好きなことに集中する、リラックスする時間をもつなど、ご自身のストレスに対処することも頻尿を改善するための1つの方法です。

まとめ

多くの女性が経験している尿トラブル。普段の生活に支障があるようなら、個々の要因に応じた対処法や治療法があります。早めに対処することで解決できる場合もありますので、一人で悩まずに医療機関や薬局などで相談してみてください。

【医学監修】関口由紀

【医学監修】関口由紀

女性医療クリニックLUNAグループ理事長。横浜市立大学泌尿器病態学客員教授。2005年横浜元町女性医療クリニック・LUNA開業。18年、ステージ別に「LUNA横浜元町」(2階)と「LUNAネクストステージ」(3階)に再構成。女性の生涯にわたるヘルスケアを実践。(www.luna-clinic.jp
女性の一生涯にわたるライブスタイルを提案するインターネットサイト「フェムゾーンラボ」(www.femzonelab.com)の社長でもある。