副作用には治療を開始してからすぐに症状があらわれるものや、治療開始後しばらくしてからあらわれるものがあります。副作用はすべての患者さんに同じようにあらわれるものではなく、症状や程度も異なります。
吐き気や嘔吐などは患者さんご自身でもわかりますが、骨髄抑制(血液系の副作用)は患者さんご自身では判断しにくいので注意が必要です。ここではティーエスワン/イリノテカン療法で発現しやすい副作用や、発現率は低くても注意が必要な副作用などをまとめました。よく読んで十分理解するようにしましょう。
また、普段の状態と違う症状があらわれた場合は、すぐに担当の医師に連絡しましょう。
発現しやすい副作用と発現時期のめやす
骨髄抑制(血液系の副作用)
抗がん剤の副作用により、血液をつくっている骨髄の働きが抑えられると、白血球(そのうちの約半数は好中球)、赤血球、血小板などが減少してきます。
骨髄抑制は自分ではわかりにくいため、日頃から骨髄抑制がもとでおこる症状や、定期的な血液検査でチェックする必要があります。
白血球(好中球)の働き
白血球(好中球)は細菌感染などからからだを守る重要な役割をしています。白血球(好中球)が少なくなると、からだの抵抗力が弱まり、かぜや肺炎などの感染症にかかりやすく、重症化することがあります。
赤血球(ヘモグロビン)の働き
ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質で、酸素と結合しやすく全身に酸素を運ぶ役割をしています。赤血球(ヘモグロビン)が少なくなると、貧血症状を感じるようになります。
血小板の働き
出血を止める働きがあります。血小板の数が減少すると出血しやすくなり、出血が止まりにくくなります。
白血球減少(好中球減少)「感染症」
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
- 38℃以上の発熱
- さむけ
- せき
- のどの痛み
- 頭痛
- 排尿時の痛み
- 排尿後も尿が残る感じ
日常生活で気をつけること!
- 感染予防のために、外出はひかえましょう。
- 外出の際はマスクを着用し、できるだけ人ごみをさけるようにしましょう。
- 手洗いをしっかりおこないましょう(食事前、トイレの前後、外出から帰ったとき)。
- うがいをこまめにしましょう(食事前、外出から帰ったとき)。
- 入浴やシャワーでからだを清潔に保ちましょう。
赤血球減少(ヘモグロビン減少)「貧血」
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
- 手足が冷たい
- 顔色が青白い
- めまい
- 立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 疲労・倦怠感
日常生活で気をつけること!
- 無理をしないで、十分な休息と睡眠をとりましょう。
- タンパク質を多く含む食事をバランスよくとりましょう。
貧血になったときは
- ゆっくり動き始める(起きあがるとき、立ち上がるとき)。
- めまいを感じたらしゃがむ、ゆっくり歩く。
血小板減少「出血傾向」
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
- 内出血(あざ)ができる
- 鼻血がでる
- 歯ぐきから出血する
日常生活で気をつけること!
- けがや転倒、打撲に注意しましょう。
- 歯磨きは、柔らかいブラシを使い、鼻はやさしくかみましょう。
- 激しい動作、スポーツはさけましょう。
- 排便時にりきまないようにしましょう。
- からだを締めつけない、ゆったりした衣類を着用しましょう。
もし出血したら
- 安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫、または冷やす。
治療開始後、数日以内に下痢と口内炎が同時に発現した場合は、ティーエスワンの服用を中止してすぐに担当医に連絡してください。
白血球、好中球が減少していることがあります
消化器系の副作用
下痢
下痢の症状が強くあらわれることがあるので注意が必要です。発現時期が、薬を投与してから24時間以内の早期にあらわれる下痢と、数日から2週間後に遅れてあらわれる下痢があります。
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
- 1日の排便回数がふだんよりも4回以上増加
- 周期的な腹痛
- 下痢(水のような便)
日常生活で気をつけること!
- 軽い下痢でも脱水にならないように、水分(スポーツ飲料など)をこまめにとりましょう。
- 下痢のときは、食物繊維や脂肪分の多い食べ物、コーヒーなどカフェインの多い飲み物はさけましょう。
- 乳酸菌食品(乳酸菌飲料やヨーグルト)などは下痢を悪化させることがあるのでさけましょう。
- おなかや下半身を暖かくして安静にすごしましょう。
- トイレのあとは肛門周囲を洗浄して清潔にたもちましょう。
- 事前に下痢止めを処方してもらい、使い方を担当医とよく相談しておくとよいでしょう。
吐き気・嘔吐
吐き気や嘔吐は治療開始後の早期から発現してきます。吐き気止めの予防投与が効果的です。
このような症状があらわれたら担当医に相談しましょう。
- 吐き気や嘔吐が長く続く
- 食事や水分がほとんどとれない
日常生活で気をつけること!
- 気になるにおいはできるだけさけましょう。
- 食べられるものを少しずつ食べるようにしましょう。
- 刺激が少なく、消化のよい麺類など脱水症状をおこさないよう、なるべく水分をとりましょう。
- おなかをしめつける衣服は着ないようにしましょう。
食欲不振
食欲が一時的に低下することがありますが、薬の投与をやめる(休薬期間)と回復してきます。
このような症状があらわれたら担当医に相談しましょう。
- 食欲不振の症状が長く続く
- 食事や水分がほとんどとれない
日常生活で気をつけること!
- 食べられるときに、少しずつ食べましょう。果物やゼリーなど酸味があってさっぱりしたもの、ヨーグルトなどタンパク質が豊富なものなど
- 脱水症状をおこさないよう、水分をとりましょう。
- 食べる場所を変えて気分転換をはかりましょう。
その他の副作用
発熱・疲労感
治療の後に、38℃くらいの発熱やだるさ、疲れやすさを感じることがありますが、これは抗がん剤治療で多くみられる副作用で、たいていはすぐによくなります。
口内炎
頬の内側の粘膜や歯ぐきに、赤い腫れ、ただれ、びらんや潰瘍などの症状があらわれることがあります。
このような症状があらわれたら担当医に相談しましょう。
- 口の中が痛い
- ヒリヒリする
- 乾燥する
- しみる
- 味がおかしい
- 飲みこみにくい
日常生活で気をつけること!
- うがいなどで、日頃から口腔内を清潔にしておくことを心がけましょう。
脱毛
治療開始数週後から毛が抜け始めることがありますが、脱毛は一時的なものです。治療終了後数ヵ月で毛が生えはじめ、約半年でほぼ回復します。
日常生活で気をつけること!
- 柔らかいブラシを使いましょう。
- シャンプーは刺激の少ないものを使いましょう。
- 帽子やカツラなどを用意しておくとよいでしょう。
- あらかじめ毛髪を短めにカットしておくのもよいでしょう。
手足症候群、色素沈着
手のひらや足の裏などが赤みを帯びて腫れてくることがあります。色素沈着は、顔、手足の皮膚や爪、及び全身の皮膚などにみられます。
このような症状があらわれたら担当医に相談しましょう。
- 手のひらや足の裏に刺すような痛み
- 手足の感覚麻痺
- 脹れ
- 皮膚が赤くなる
- 皮膚の乾燥やかゆみ
- 変色
日常生活で気をつけること!
- 色素沈着は日光に当たると強まる傾向があるので、直射日光をさけ、日焼け止めクリームを塗りましょう。
- 石鹸は刺激の少ないものを使いましょう。
- 入浴後は保湿クリームなどを塗って皮膚の乾燥を防ぎましょう。
間質性肺炎
肺の間質という部分が炎症を起こして呼吸機能が低下します。起こることはまれですが、注意が必要な副作用です。初期には、せきや発熱など、かぜと同じような症状があらわれますので、自分で判断しないで担当の医師や看護師に連絡してください。
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
かぜに似た症状
- 空せき(痰がでないせき)
- 息切れ
- 発熱
- 倦怠感
流涙(涙目、涙がでる)
涙が多くなり、目から涙がこぼれてくることがあります。涙の量が増えて起こる場合と、涙の通り道(目から鼻に通じている管)が詰まって起こる場合があります。結膜炎や角膜炎が起こっている場合もありますので、早めに担当の医師に相談してください。
このような症状があらわれたら担当医に相談しましょう。
- 涙が止まらない
- 目が痛い
- 目がかすむ
- 物が見えにくい
日常生活で気をつけること!
- 日常生活で目の症状が気になるときは、なるべく早く担当の医師に相談してください。症状によっては、眼科検査と治療を行う必要があります。
発現することはまれですが、次のような副作用が報告されています。症状に気づいたらすぐに担当の医師に連絡してください。
腸管穿孔、消化管出血、腸管麻痺、腸閉塞
腸に穴があいたり、消化管から出血して血の混ざった便が出たり、腸閉塞(腸管内容物の通過障害により、便やガスが出なくなる状態)になることがあります。
このような症状があらわれたらティーエスワンの服用をいったんやめて、すぐに担当医に連絡しましょう!
- 強い腹痛
- 下血
- 血便
このほかにも、ベバシズマブを投与する場合には高血圧やアレルギー反応(過敏症、アナフィラキシーショック)などの副作用があらわれることがあります。
アレルギー反応(過敏症、アナフィラキシーショック)
点滴中に起こることがほとんどです。動悸、息苦しい、皮膚が赤くなる、からだがかゆいなどの症状があらわれることがあります。
高血圧
自宅で定期的(1日1~2回程度)に血圧を測定して記録しておきましょう。
このほかにも、気になる症状やいつもと違う症状がある場合は、担当の医師や看護師、薬剤師に必ず伝えてください。
ティーエスワン/イリノテカン療法を正しく理解し、副作用と上手につきあいながら治療を続けていくことが大切です。不安なことやわからないことは、どんなことでも担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。