術後補助化学療法とは?
がんの切除手術の後で、再発を予防するために抗がん剤による治療を行うことです。
膵がんは手術で切除した後も、目に見えない小さながん細胞ががんの周囲や他の部位に散らばり、再発の原因になると考えられています。術後補助化学療法は、この予防のために行われる治療です(下図)。
がん細胞は放っておけば、どんどん増えていきます。仮に、手術でがんを取り切れていなかった場合、手術直後ががん細胞のもっとも少ない時期になります。このときに血液にのって全身にいきわたることができる抗がん剤で各部位に散らばったがん細胞をたたいてしまえば、がんを消滅させることができる可能性があります。
ティーエスワンは、日本人の膵がん患者さんを対象とした臨床試験によって、術後補助化学療法としての有効性と安全性が確認され、膵癌診療ガイドラインにおいて、その使用が推奨されるお薬です。飲み薬ですので、退院後、ふつうに生活をしながら治療を続けることができます。
術後補助化学療法で使う薬について
膵がんの術後補助化学療法で使われる抗がん剤には、注射や飲み薬があり、ティーエスワンは1日2回飲む薬です。
ティーエスワンの治療方法
- ティーエスワンは、手術後、遅くとも、10週間以内に飲み始めます。
- ティーエスワンは4週間(28日間)毎日続けて服用し、2週間(14日間)お休みします。これを1コースとし、繰り返します。
- 手術後半年間ティーエスワンを服用します。
ティーエスワンによる治療を始める前に
- ティーエスワンによる治療を安全に行うために、下記の項目にあてはまる方は、必ず担当の医師にお伝えください。あなたのからだの状態や検査の結果によっては、この治療が受けられないことがあります。
心当りのある人は、あらかじめ担当の医師や看護師、薬剤師に伝えておきましょう
- 今、使用している薬がある
- 薬や食べ物にアレルギーがある
- 心臓・腎臓・肝臓の病気がある(検査値の異常がある)
- 透析治療を受けている
- 妊婦または妊娠している可能性がある
必ず守りましょう
- 他の医師または歯科医師の治療を受けるときには、ティーエスワンの治療を受けていることを伝えてください。
ティーエスワンについて
- ティーエスワンは1999年に発売され、がんを治療する薬として、広く使われています。
- この薬は、フルオロウラシル(5-FUと略されます)という、がんを治療する薬の効果を高め、副作用を少なくするために開発された薬です。
- 以下の3つの成分が配合されています。
テガフール
体内でフルオロウラシルに変換され、がん細胞を攻撃します。
ギメラシル
フルオロウラシルの分解を抑えて効果を持続させます。
オテラシルカリウム
下痢などの消化器系の副作用を減らし、症状を軽くするはたらきをもっています。
- この薬は、膵がんの他に胃がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、結腸・直腸がん、胆道がんに対して効果を示します。
- OD(オーディー)錠、顆粒剤とカプセル剤があり、いずれかを服用します。
OD錠 | 顆粒剤 | カプセル剤 | |
20mg | |||
25mg |
投与量(飲む薬の量)
- あなたの身長と体重から体表面積を計算し、薬の量が決められます(下図)。
- 腎機能が悪い人では、投与量を一段階減らす場合があります。
- その他、からだの状態や副作用の程度によっても、投与量を一段階減らす場合があります。
- 服用中は、副作用の状態を確認しながら、投与量を変更することもあります。
患者さん | 体表面積 | 1日量 | 朝食後 | 夕食後 |
---|---|---|---|---|
小さい人 |
1.25m2 未満 |
80mgのとき | 40mg/回 (20mg×2) |
40mg/回 (20mg×2) |
普通の人 |
1.25m2~ 1.5m2未満 |
100mgのとき | 50mg/回 (25mg×2) |
50mg/回 (25mg×2) |
大きい人 |
1.5m2 以上 |
120mgのとき | 60mg/回 (20mg×3) |
60mg/回 (20mg×3) |