検査で分かる副作用
骨髄抑制
血液中には白血球、血小板、赤血球などの成分が含まれ、これらは骨髄で作られています。
骨髄は抗がん剤による影響をとても受けやすく、治療中は骨髄抑制という副作用となってあらわれます。
骨髄抑制は自分で分かりにくいため、血液検査で定期的にチェックしていきます。
白血球減少「感染症」
白血球(特に好中球)が減少すると、からだの抵抗力が低下して、感染症にかかりやすくなったり、ときには、全身の感染症をひき起こしたりすることがあります。
副作用マネジメント
38℃以上の発熱を認めた場合は、ティーエスワンの服用をお休みし、あらかじめ処方されている薬を服用してください。
- 抗菌剤(シプロフロキサシンなど)
- 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
日常生活の注意
- 感染症の予防(白血球が減っているとき)
- 手洗いをしっかり行いましょう(食事前、トイレの後、外出から帰ったとき)
- うがいをこまめに行いましょう(外出から帰ったとき、食事の前)
- 口の中を清潔に保ちましょう(食後、寝る前の歯みがき)
- 体調に合わせて、無理をしないようにしましょう
来院するか、早めに医師、看護師または薬剤師に知らせましょう
- 抗菌剤を2~3日間服用しても症状が改善しない場合
ヘモグロビン減少(貧血)
赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなると、全身に酸素が十分いきわたらなくなり、貧血症状を感じることがあります。
おもな症状
- 手足が冷たい
- 顔色が青白い
- めまい
- 動悸、息切れ
病院で行われる貧血の治療
- ヘモグロビンが7g/dL以下になると輸血をします
日常生活の注意
- ゆっくり動き始めましょう(起き上がる、立ち上がる)
- めまいを感じたらしゃがんだり、手すりや壁などに寄りかかりましょう
血小板減少「出血傾向」
血小板は出血を止める作用があるため、血小板が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりします。
おもな症状
- あざができる
出血時の対策
- 出血部位を圧迫します
- 出血が止まらないときは医師、看護師や薬剤師に知らせましょう
日常生活の注意
- ころんだり、ケガをしたりしないように注意しましょう
- 排便は、りきみすぎないようにしましょう
- 歯みがきはやわらかいブラシを使い、鼻かみはやさしく行いましょう
自分で分かる副作用
吐き気・嘔吐
薬の影響を受けて、むかついたり、場合によっては吐いてしまうことがあります。
日常生活の注意
- においのする料理はさけましょう(揚げ物、煮物、煮魚など)
- さましてから食べましょう
- 食事はゆっくり時間をかけ、少量ずつ食べられる物をとりましょう
食欲不振
薬の影響を受けて、食欲が一時的に低下することがあります。
食事や水分がとれなくなると脱水になりやすいので注意が必要です。
日常生活の注意
- 体力を落とさないためにも、食べられる物、好きな物を少しずつでも食べましょう
- 水分をとるようにしましょう
医師、看護師または薬剤師に知らせて対処方法を相談しましょう
- 吐き気・嘔吐が長く続き、つらいとき
- 食事や水分がほとんどとれないとき
末梢神経症状
末梢神経症状はオキサリプラチンによる影響でほとんどの方にあらわれますが、症状と程度はさまざまです。
投与直後から1~2日以内にあらわれる急性症状と、繰り返しの治療により、投与したオキサリプラチンの量が多くなることであらわれる慢性症状があります。
急性症状
手足、口の周囲のしびれやチクチクする痛み、舌の感覚の違和感、あごがしめつけられる、食べ物や飲み物が飲み込みにくいなどの症状があらわれます。
慢性症状
手足のしびれや痛みによって、ボタンが外しにくい、文字が書きにくい、歩きにくい、食べ物や飲み物が飲み込みにくいなどの症状が続くことがあります。
日常生活の注意
- からだが冷えたり、冷たい物にふれることで症状があらわれやすくなります
からだを冷やさないように注意しましょう - 手足がしびれていると、感覚がにぶくなります
ケガややけどに注意しましょう
医師、看護師または薬剤師に相談しましょう
- 次の点滴注射までしびれが続くようになる場合
下痢
腸の粘膜が薬により傷害され、下痢が起こることがあります。
下痢が続くと脱水症状になりやすいので、注意が必要です。
日常生活の注意
- 水分※をこまめにとりましょう
- スポーツ飲料などで電解質※を補給しましょう
- 食事を工夫しましょう
- 消化のよい物(おかゆ、うどんなど)、カリウムの多い食品(バナナ、果物ジュースなど)をとる
- 食事は何回かにわけて、少しずつとる
- 下痢によって、電解質(ナトリウム、カリウムなど)が水分と一緒に排泄されてしまいます
来院するか、早めに医師、看護師または薬剤師に知らせましょう
- 下痢止めの薬を飲んでも水様便が続く場合
口内炎
口の粘膜が薬の影響を受け、口内炎があらわれることがあります。
日常生活の注意
- 歯みがきをていねいに行い、口の中を清潔に保ちましょう
(歯ブラシは小さめで、やわらかい物を使う) - うがいや水分補給をこまめに行い、口の中を乾燥させないようにしましょう
- 口内炎ができてしまったら、ごくうすい塩水や、うがい薬を使ってこまめにうがいをしましょう
早めに医師、看護師または薬剤師に知らせましょう
- ティーエスワンを服用しはじめて数日以内に下痢と同時に口内炎があらわれる場合
- 広い範囲に口内炎があらわれる場合
流涙(涙がでる)
涙がでる、目が充血する、目が痛い、物が見えにくい、目がかすむ、目がかわく、結膜炎、角膜炎、涙道閉塞(涙が流れる管がつまる)などの症状があらわれることがあります。
早めに医師、看護師または薬剤師に相談しましょう
- 目の症状が気になる場合
(症状によっては、眼科検査と治療を行う必要があります)
色素沈着
皮膚や爪・指先などが褐色や黒色になります。
直射日光で色素沈着が増強されます。
ティーエスワンの服用を中止することで回復します。
日常生活の注意
- 強い日差しが差し込む窓ぎわなどをできるだけさけましょう
- 外出時は帽子や衣類で、直射日光をさけましょう
消化管穿孔(しょうかかんせんこう)
ごくまれに、消化管に穴があくことがあります。
症状があらわれる時期は患者さんによって異なります。
ほとんどの場合、緊急手術が必要になります。
すぐに医師、看護師または薬剤師に知らせましょう
- 経験のないほどの強い腹痛の場合
その他の副作用
このほかにも皮疹(発疹)、疲労感、高血圧、間質性肺炎、アレルギー反応(過敏症、アナフィラキシーショック)、注射した部位が痛くなる注射部位反応などの副作用があらわれることがあります。
副作用名 | 症状があらわれたときの注意 |
---|---|
皮疹(発疹) |
全身に皮疹がでたり、かゆみをともなう場合には、ティーエスワンをお休みして早めに来院してください。 |
疲労感 | 無理をせず、からだを休めましょう。 |
高血圧 |
自宅で定期的(1日1~2回程度)に血圧を測定し、「治療日記」に記録しておきましょう。 |
間質性肺炎 |
ごくまれですが、痰がでない咳、息苦しい、息切れ、発熱をともなう症状があらわれることがあります。 |
アレルギー反応 (過敏症 アナフィラキシーショック) |
点滴中に起こることがほとんどです。 |
注射部位反応 | 注射した部位の痛みが続く場合には、来院してください。 |
このほかにも、気になる症状やいつもと違う症状がある場合は、医師、看護師または薬剤師に必ず知らせましょう。
ティーエスワン+オキサリプラチン+ベバシズマブ併用療法を正しく理解し、副作用と上手につきあいながら治療を続けていくことが大切です。
不安なことや分からないことは、どんなことでも医師、看護師または薬剤師におたずねください。