乳癌
適正使用に関するお願い
アブラキサン(本剤)は、人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させた製剤です。
投与方法、適応症、薬物動態、副作用発現頻度等が他のパクリタキセル製剤*と異なりますので、投与に際しては、十分ご留意ください。
*「他のパクリタキセル製剤」とは添加物としてポリオキシエチレンヒマシ油及び無水エタノールを使用しているパクリタキセル製剤のことを指します。
「適正使用ガイド」では、乳癌に対する本剤の治療を安全かつ適正に行っていただくために、症例選択、投与方法、治療開始前~治療期間中の注意事項、副作用とその対策、患者さんへの説明、調製方法等について解説しています。
本剤の投与に際しては、最新の添付文書及び適正使用ガイドをご参照の上、適正使用をお願い致します。
投与に際しては、以下の項目について十分ご留意ください。
効能又は効果
効能又は効果に関連する注意(抜粋)
- 〈効能共通〉
- 本剤の手術の補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
用法及び用量(抜粋)
乳癌にはA法又はE法を使用する。
- A法:
- 通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回260mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜減量する。
- E法:
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜減量する。
用法及び用量に関連する注意(抜粋)
- 本剤の投与にあたっては下記に留意し、必要に応じ休薬、減量を実施すること。
- ・A法又はE法
- 好中球数及び血小板数の変動に十分留意し、次コース投与前の臨床検査で好中球数が1,500/mm3未満又は血小板数が100,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまで投与を延期すること。また、E法の同一コース内の投与にあたっては、投与前の臨床検査で好中球数が500/mm3未満又は血小板数が50,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまで投与を延期すること。投与後、好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合、血小板数が50,000/mm3未満となった場合、又は発熱性好中球減少症が発現した場合、更にE法では次コース投与開始が7日間以上延期となる好中球減少が発現した場合も次コースの投与量を減量すること。
また、高度(Grade 3)な末梢神経障害が発現した場合には、軽快又は回復(Grade 1以下)するまで投与を延期し、次回の投与量を減量すること。
- ・減量の目安
-
減量段階 A法 E法 通常投与量 260mg/m2 100mg/m2 1段階減量 220mg/m2 75mg/m2 2段階減量 180mg/m2 50mg/m2
乳癌で注意を要する副作用
- 末梢神経障害
- 発現頻度の高い副作用です。投与中止・延期又は休薬することがあり、次回以降の減量を必要とすることがあります。
- 骨髄抑制
- 骨髄抑制は用量制限毒性(DLT)です。
投与中止・延期又は休薬することがあり、次回以降の減量を必要とすることがあります。
骨髄抑制の持続により発熱性好中球減少症等の感染症の併発が報告されています。
- 感染症
- 好中球減少より重症感染症を併発し、死亡した症例が報告されています。
- 間質性肺疾患
- 間質性肺炎、肺臓炎、びまん性肺胞障害等が報告されています。
初期症状として発熱、咳嗽、息切れ、呼吸困難等があらわれています。
- 脳神経麻痺
- 顔面神経麻痺、声帯麻痺等の脳神経麻痺が報告されています。
- 黄斑浮腫
- 視力低下等の患者の訴えを主治医が眼科医に相談し、黄斑浮腫が確認されました。
処置が遅れると、視力障害が長期に持続する可能性があります。
投与時
- インラインフィルターは使用しないでください。
- 他の薬剤等との配合又は同じ静注ラインでの同時注入はしないでください。
重要な基本的注意
本剤は添加物としてヒト血液由来成分(人血清アルブミン)を使用しているため、特定生物由来製品に該当します。
参考アブラキサン治療開始前~治療期間中の注意事項(E法:毎週投与法(アブラキサン/他の抗悪性腫瘍剤併用投与)、A法:3週ごと投与法)
E法(毎週投与法:アブラキサン/他の抗悪性腫瘍剤併用投与)
症例の選択基準の目安
- 治療開始前には必ず臨床検査を実施し、可能な限り、【適正使用基準】を満たしていることを確認してください。
- 【適正使用基準】に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮してください。
なお、投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査(観察項目と実施の目安(治験における検査スケジュール)参照)を実施するとともに、患者の状態(PS、栄養状態等)を十分観察しながら、適宜減量する等慎重に投与してください。- (1)生理機能(骨髄、心、肺、肝、腎等)が十分保持されている症例
- (2)感染症又はその疑い(CRP異常、発熱、白血球異常増多)のない症例
E法(毎週投与法:アブラキサン/アテゾリズマブ併用投与)症例の選択基準の目安
項目 | 適正使用基準*1 | |
---|---|---|
ECOG Performance Status(PS) | PS 0~1 | |
骨髄機能 | 白血球数(/mm3) | ≦12,000 |
好中球数(/mm3) | ≧1,500 | |
リンパ球数(/mm3) | ≧500 | |
血小板数(/mm3) | ≧100,000 | |
ヘモグロビン値(g/dL) | ≧9.0 | |
肝機能 | AST(GOT)、ALT(GPT) | ≦ULN*2×2.5倍*3 |
アルカリフォスファターゼ | ≦ULN×2.5倍*4 | |
血清ビリルビン | ≦ULN×1.25倍*5 | |
腎機能 | クレアチニン値(mg/dL) | ≦1.5*6 |
血液凝固機能 | PT-INR | ≦ULN×1.5倍 |
aPTT | ≦ULN×1.5倍 |
- *1 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)における投与患者の選択基準等を参考に設定
- *2 ULN;(施設)基準値上限
- *3 肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *4 肝転移又は骨転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *5 ジルベール病の場合は、各施設基準値上限の3倍まで許容する
- *6 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)における投与患者の選択基準は推定クレアチニンクリアランス ≧30ml/minであった
- 1) 未治療の転移性トリプルネガティブ乳癌患者を対象とした,アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)とnab-paclitaxelの併用をプラセボとnab-paclitaxelの併用と比較するランダム化プラセボ対照国際多施設共同盲検第Ⅲ相試験, 社内資料; 承認時評価資料
- 2) Schmid, P. et al.: N. Engl. J. Med., 2018, 379(22), 2108-2121; 承認時評価資料
E法 毎週投与法:アブラキサン/ペムブロリズマブ併用投与)
※国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-355試験)3)における症例の選択基準の目安
項目 | 選択基準 | |
---|---|---|
ECOG Performance Status(PS) | PS 0~1 | |
骨髄機能 | 好中球数(/μL) | ≧1,500 |
血小板数(/μL) | ≧100,000 | |
ヘモグロビン | ≧9.0g/dL又は≧5.6mmol/L*1 | |
腎機能 | クレアチニン値又はクレアチニンクリアランスの測定値/計算値*2(GFRも可) | ≦ULN*3×1.5倍又は クレアチニン値>ULN×1.5倍の場合はクレアチニンクリアランス≧30mL/分 |
肝機能 | 総ビリルビン値 | ≦ULN×1.5倍又は 総ビリルビン値>ULN×1.5倍の場合は直接ビリルビン値≦ULN |
AST(SGOT)、ALT(SGPT) | ≦ULN×2.5倍又は 肝転移を有する場合は≦ULN×5倍 |
|
アルブミン値 | ≧3.0g/dL | |
血液凝固機能 | INR又はプロトロンビン時間 | ≦ULN×1.5倍(抗凝固療法なし) 抗凝固療法を受けている場合はプロトロンビン時間、PTTは治療域の範囲内 |
aPTT |
- E法の適正使用基準と異なる投与基準を赤文字で示しています。
- *1 エリスロポエチン依存性及び、2週間以内にpRBC(packed red blood cell)輸血を受けた患者を除く
- *2 各施設の標準的な方法で求めたもの
- *3 ULN;(施設)基準値上限
観察項目と実施の目安(治験における検査スケジュール)
- 以下の検査スケジュールを参考に十分な副作用管理を行ってください。
- 特に投与1コース目は頻回に臨床検査を実施し、患者状態を十分観察してください。
- 異常が認められた場合には、適切な処置を行うとともに投与継続の可否を慎重に判断してください。(〈減量・再開の目安〉を参照)
E法国際共同第Ⅲ相試験(IMpassion130試験)における検査スケジュール
評価実施許容範囲(日) | スクリーニング | 全サイクル | 治験薬 投与中止 |
追跡調査 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
−28日目 ~−1日目 |
1 | 8(+3) | 15(+3) | 最終投与後 30日以内 |
||
病歴、手術歴、癌の罹患歴 (被験者背景情報を含む) |
○ | |||||
HIV、HBV、HCV血清検査 | ○ | |||||
併用薬の確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
腫瘍評価 | ○ | 腫瘍評価は、ベースライン時と、ランダム化実施後12カ月間は8週ごと(±1週間)、それ以降は12週ごと(±1週間)に実施し、臨床上必要な場合には追加的なスキャン検査を実施する。 | ○ | ○ | ||
頭部CT又はMRI | ○ | |||||
ECOG Performance Status | ○ | ○ | ○ | |||
バイタルサイン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
12誘導心電図 | ○ | 臨床上の必要性に応じて実施 | ||||
体重 | ○ | ○ | ○ | |||
身長 | ○ | |||||
血液学的検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
血液生化学検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
凝固検査(aPTT、INR) | ○ | ○ | ||||
C反応性蛋白検査 | ○ | ○ | ||||
尿検査 | ○ | 臨床的な必要性に応じて実施 | ||||
妊娠検査(妊娠可能な女性のみ) | ○ | ○ | ○ | |||
TSH、遊離T3、遊離T4 | ○ | サイクル1の1日目及び2サイクル毎 | ○ | |||
自己抗体検査 | ○ | |||||
ATA*評価用血清検体の採取 | ○ | ○ | ○ |
- バイタルサイン:心拍数、呼吸数、血圧、体温
- 血液学的検査: 赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数及び分画(好中球、好酸球、リンパ球、単球、好塩基球、その他の細胞)、血小板数
- 血液生化学検査: BUN又は尿素、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、クロール、重炭酸塩、カルシウム、リン、グルコース、総ビリルビン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総蛋白、アルブミン
- 尿検査:尿比重、尿pH、尿糖、尿蛋白、尿ケトン、尿潜血
- *ATA:抗薬物抗体(anti-therapeutic antibody) 治験時におけるアテゾリズマブの免疫原性評価のために測定
E法国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-355試験)における検査スケジュール
治療期 | スクリーニング期 | 治療期(3週間サイクル:ペムブロリズマブの投与サイクル) | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
治療サイクル | スクリーニング | 1 | 2 | 3 | 4 | ≧5 | ||||||||
評価実施日 | −28日目~−1日目 | 1 | 8 | 15 | 1 | 8 | 15 | 1 | 8 | 15 | 1 | 8 | 15 | 1/8/15 |
評価実施 許容範囲(日) |
N/A | N/A | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 | ±3 |
身体検査 | ○ | ○ | ||||||||||||
特定項目の身体検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
12誘導心電図 | ○ | |||||||||||||
バイタルサイン、体重 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
ePROs | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
ECOG Performance Status | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
有害事象のモニタリング | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
閉経状態 | ○ | |||||||||||||
全血球算定 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
生化学検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
尿検査 | ○ | |||||||||||||
PT/INR、aPTT | ○ | |||||||||||||
T3(又は遊離T3)、遊離T4、TSH | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
血清ビタミンD | ○ | |||||||||||||
血清FSH、エストラジオール | ○ | |||||||||||||
腫瘍マーカー(CA15-3、CEA、CA27.29) | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
妊娠検査(血清/尿中β-hCG) | ○ |
- バイタルサイン:体温、脈拍数、血圧、呼吸数、体重(身長は最初の来院時のみ測定)
- ePROs(electronic Patient Reported Outcomes):EORTC QLQ-C30、EORTC QLQ-BR23、EQ-5D™
Reprinted from The Lancet, 396. 10265, Cortes J, et al., Pembrolizumab plus chemotherapy versus placebo plus chemotherapy for previously untreated locally recurrent inoperable or metastatic triple-negative breast cancer (KEYNOTE-355): a randomised, placebo-controlled, double-blind, phase 3 clinical trial, 1817–1828, Copyrigh(t 2020), with permission from Elsevier.
治療期間中の注意
<アブラキサン/アテゾリズマブ併用投与>
●コース内投与時(Day 8、15)の注意
①Day 8:【アブラキサンコース内投与基準(Day 8)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップする。Day15は副作用が回復・軽快したことを確認し投与を行ってください。
②Day 15:【アブラキサンコース内投与基準(Day 15)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップし、アテゾリズマブを投与する。Day 29以降にアブラキサンは副作用が回復・軽快したことを確認し投与を行ってください(次コース開始時(Day 1)の注意参照)。
③Day 15:【アテゾリズマブ投与基準】に該当しない場合
アテゾリズマブの投与をスキップし、アブラキサンを投与する。Day 29以降に副作用が回復・軽快したことを確認し次コースDay 1に投与を行ってください。
●次コース開始時(Day 1)の注意
2コース目以降の投与は必ず臨床検査、患者状態を確認し、【アブラキサン次コース開始基準】及び【アテゾリズマブ投与基準】に該当していることを確認してください。【アブラキサン次コース開始基準】及び【アテゾリズマブ投与基準】に該当しない場合は投与を延期し、回復・軽快したことを確認して次コースの投与を開始してください。また、前コースでの副作用の発現状況(発現時期、程度)を考慮し、投与の可否、投与量の減量を検討してください。
①Day 1:【アブラキサン次コース開始基準】に該当しない場合
原則としてDay 1はアブラキサンとアテゾリズマブを併用投与しますが、アブラキサンのDay 1投与をスキップする場合は、Day 1をアテゾリズマブ単剤で投与することが可能です。その場合、アブラキサンは回復・軽快したことを確認してDay 8に投与を行ってください。
②Day 1:【アテゾリズマブ投与基準】に該当しない場合
アテゾリズマブの投与をスキップし、回復・軽快したことを確認してDay 15に投与を行ってください。
<アブラキサン/ペムブロリズマブ併用投与>
●コース内投与時〔Day 8(Week 2)、15(Week 3)〕の注意
①Day 8(Week 2):【アブラキサンコース内投与基準(Day 8)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップする。Day 15(Week 3)は副作用が回復・軽快したことを確認し投与を行ってください。
②Day 15(Week 3):【アブラキサンコース内投与基準(Day 15)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップする。回復・軽快したことを確認し次コースDay 1(Week1)に投与を行ってください。
●次コース開始時(Day 1)の注意
2コース目以降の投与は、必ず臨床検査、患者の状態を確認し、【次コース開始基準】を満たし、ぺムブロリズマブの休薬・中止基準を満たさないことを確認してください。
①Day 1:【次コース開始基準(Day 1)】に該当しない場合
ぺムブロリズマブ及びアブラキサンの投与を2剤同時に延期し、回復・軽快したことを確認し、次コースのDay 1(Week 1)として投与を行ってください。
減量・再開の目安
2回目以降のアブラキサン又は他の抗悪性腫瘍剤投与時に【アブラキサン減量基準】又は【他の抗悪性腫瘍剤投与基準】に該当する副作用が認められた場合は、副作用の回復・軽快を確認後(前回投与以降に認められた副作用)、投与量を調節し、再開してください。なお、アテゾリズマブ及びペムブロリズマブは減量しません。
- ①同一コースの前回投与後、【アブラキサン減量基準】に該当する副作用が認められた場合
【アブラキサンコース内投与基準】、【他の抗悪性腫瘍剤投与基準】に回復・軽快するまで投与をスキップし、アブラキサンは〈減量の目安:E法〉を参考に減量し投与してください。 - ②前コースの最終投与後、【アブラキサン減量基準】に該当する副作用が認められた場合
【アブラキサン次コース開始基準】、【他の抗悪性腫瘍剤投与基準】に回復・軽快するまで投与を延期し、アブラキサンは〈減量の目安:E法〉を参考に減量し投与してください。 - ③末梢神経障害
末梢神経障害はGrade 2以下であっても、アブラキサンの減量を考慮してください。(乳癌の使用成績調査1)では、減量や処置等により回復・軽快した症例が認められています。)
項目 | 減量基準 | 次コース開始基準 | コース内投与基準 | |
---|---|---|---|---|
Day 1 | Day 8 | Day 15 | ||
好中球数(/mm3) | <500*1又は<1,500のため7日間以上延期した場合 | ≧1,500 | ≧1,000*2 | ≧1,000 |
発熱性好中球減少症 | 発現 | 認めない/回復 | ||
血小板数(/mm3) | <50,000 | ≧100,000 | ≧75,000 | ≧75,000 |
AST(GOT)、ALT(GPT) | 医師が同一用量で投与継続困難と判断 | ≦ULN*3×3倍*4 | ||
総ビリルビン | −*5 | ≦ULN×1.5倍 | ||
クレアチニン | − | ≦ULN×1.5倍 | − | |
末梢神経障害 | ≧Grade 3 | ≦Grade 2又は前コースで≧Grade 3が発現した場合: ≦Grade 1に回復後 |
||
皮膚障害 | ≧Grade 2 | ≦Grade 1 | ||
粘膜炎又は下痢*6 | ≧Grade 3 | ≦Grade 1 | ||
非血液学的毒性(脱毛は除く) | ≧Grade 3 | ≦Grade 2 |
- *1 添付文書には「好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合は投与量を減量すること」と記載している
- *2 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)2, 3)及び添付文書では、Day 8、15において好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与可能となっているため、好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与する場合は投与量の調整を考慮し、慎重に投与すること
- *3 ULN;(施設)基準値上限
- *4 肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *5 総ビリルビンの減量についてはアブラキサン 適正使用ガイド[乳癌]Q&AのQ3を参照(P.69参照)
- *6 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)2, 3)では「下痢、口内炎:Grade 4の発現でアブラキサンの投与中止」であった
【減量基準】【次コース開始基準】【コース内投与基準】以外で減量/投与延期/投与スキップが必要な場合は医師判断で減量/延期/スキップしてください。
- 1)アブラキサン点滴静注用100mg使用成績調査, 社内資料, 2014年
- 2) 未治療の転移性トリプルネガティブ乳癌患者を対象とした,アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)とnab-paclitaxelの併用をプラセボとnab-paclitaxelの併用と比較するランダム化プラセボ対照国際多施設共同盲検第Ⅲ相試験, 社内資料; 承認時評価資料
- 3) Schmid, P. et al.: N. Engl. J. Med., 2018, 379(22), 2108-2121; 承認時評価資料
〈減量の目安:E法〉
減量段階 | アブラキサン |
---|---|
通常投与量 | 100mg/m2 |
1段階減量 | 75mg/m2 |
2段階減量 | 50mg/m2 |
アテゾリズマブ投与基準
副作用 | 程度 | 処置 |
---|---|---|
間質性肺疾患等の呼吸器障害 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3以上又は再発性の場合 | 本剤を中止する。 | |
肝機能障害(切除不能な肝細胞癌を除く) | Grade 2(AST若しくはALTが基準値上限の3倍超かつ5倍以下又は総ビリルビンが基準値上限の1.5倍超かつ3倍以下の増加)が5日を超えて継続する場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3以上(AST若しくはALTが基準値上限の5倍超又は総ビリルビンが基準値上限の3倍超に増加)の場合 | 本剤を中止する。 | |
肝機能障害(切除不能な肝細胞癌の場合) |
|
Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
AST若しくはALTが基準値上限の10倍超又は総ビリルビンが基準値上限の3倍超に増加した場 | 本剤を中止する。 | |
大腸炎/下痢 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 4の場合 | 本剤を中止する。 | |
膵炎 |
|
Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復 しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 4又は再発性の膵炎 | 本剤を中止する。 | |
内分泌障害 | Grade 3以上の高血糖 | 血糖値が安定するまで、本剤を休薬する。 |
|
左記の状態が回復するまで、本剤を休薬する。 | |
Grade 2以上の副腎機能不全 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復 しない場合は、本剤を中止する。 | |
|
Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復 しない場合は、本剤を中止する。 | |
|
本剤を中止する。 | |
脳炎、髄膜炎 | 全Grade | 本剤を中止する。 |
神経障害 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3以上の場合 | 本剤を中止する。 | |
全Gradeのギラン・バレー症候群 | 本剤を中止する。 | |
重症筋無力症 | 全Grade | 本剤を中止する。 |
皮膚障害 | Grade 3の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 4の場合 | 本剤を中止する。 | |
腎炎 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3以上の場合 | 本剤を中止する。 | |
筋炎 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3の再発又はGrade 4の場合 | 本剤を中止する。 | |
心筋炎 | Grade 2以上の場合 | 本剤を中止する。 |
血球貪食症候群 | 全Grade | 本剤を中止する。 |
眼障害 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合は、本剤を中止する。 |
Grade 3以上の場合 | 本剤を中止する。 | |
Infusion reaction | Grade 1の場合 | 投与速度を50%に減速する。なお、軽快した後30分間経過観察し、再発しない場合には投与速度を元に戻すことができる。 |
Grade 2の場合 | 投与を中断し、軽快後に投与速度を50%に減速し再開する。 | |
Grade 3以上の場合 | 本剤を直ちに中止する。 |
GradeはNCI-CTCAE(National Cancer Institute-Common Terminology Criteria for Adverse Events)v4.0に準じる。
アテゾリズマブ添付文書(第5版)2022年5月改訂
ぺムブロリズマブ投与基準
副作用 | 程度 | 処置 |
---|---|---|
間質性肺疾患 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合には、本剤を中止する。 |
Grade 3以上又は再発性のGrade 2の場合 | 本剤を中止する。 | |
大腸炎/下痢 | Grade 2又は3の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合には、本剤を中止する。 |
Grade 4又は再発性のGrade 3の場合 | 本剤を中止する。 | |
肝機能障害 |
|
Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合には、本剤を中止する。 |
|
本剤を中止する。 | |
腎機能障害 | Grade 2の場合 | Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合には、本剤を中止する。 |
Grade 3以上の場合 | 本剤を中止する。 | |
内分泌障害 |
|
Grade 1以下に回復するまで、本剤を休薬する。 12週間を超える休薬後もGrade 1以下まで回復しない場合には、本剤の中止を検討する。 |
Infusion reaction | Grade 2の場合 | 本剤の投与を直ちに中止する。1時間以内に回復する場合には、投与速度を50%減速して再開する。 |
Grade 3以上の場合又は再発性のGrade 2の場合 | 本剤を直ちに中止し、再投与しない。 | |
上記以外の副作用 |
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以下の場合を除き、本剤を中止する。再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫患者においてGrade 4の血液毒性が発現した場合は、 Grade 1以下に回復するまで本剤を休薬する。 |
GradeはNCI-CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)v4.0に準じる。
ぺムブロリズマブ添付文書 2022年11月改訂(第14版)
- *1 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)における投与患者の選択基準等を参考に設定
- *2 ULN;(施設)基準値上限
- *3 肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *4 肝転移又は骨転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *5 ジルベール病の場合は、各施設基準値上限の3倍まで許容する
- *6 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)における投与患者の選択基準は推定クレアチニンクリアランス ≧30ml/minであった
- *7 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)及び添付文書では、Day 8、15において好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与可能となっているため、好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与する場合は投与量の調整を考慮し、慎重に投与すること。
- *8 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1, 2)では「下痢、口内炎:Grade 4の発現でアブラキサンの投与中止」であった
- *9 アテゾリズマブの点滴時間は、初回投与は60分であるが、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間に短縮できる
- *10 添付文書には「好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合は投与量を減量すること」と記載している
- 1) 未治療の転移性トリプルネガティブ乳癌患者を対象とした,アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)とnab-paclitaxelの併用をプラセボとnab-paclitaxelの併用と比較するランダム化プラセボ対照国際多施設共同盲検第Ⅲ相試験, 社内資料; 承認時評価資料
- 2) Schmid, P. et al.: N. Engl. J. Med., 2018, 379(22), 2108-2121; 承認時評価資料
- *1 アブラキサン/ペムブロリズマブの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験、KEYNOTE-355試験)3)における投与患者の選択基準
- *2 エリスロポエチン依存性及び、2週間以内にpRBC(packed red blood cell)輸血を受けた患者を除く
- *3 各施設の標準的な方法で求めたもの
- *4 ULN;(施設)基準値上限
- *5 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1,2)及び添付文書では、Day 8、15において好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与可能となっているため、好中球数500/mm3~1,000/mm3で投与する場合は投与量の調整を考慮し、慎重に投与すること。
- *6 肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *7 アテゾリズマブとの併用投与試験(E法:国際共同第Ⅲ相試験)1,2)では「下痢、口内炎:Grade 4の発現でアブラキサンの投与中止」であった
- *8 添付文書には「好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合は投与量を減量すること」と記載している
- 3) Cortes, J. et al.: Lancet, 2020, 396(10265), 1817-1828
Cortes, J. et al.: Lancet, 2020, 396(10265), 1817-1828 Supplementary appendix; 承認時評価資料
A法(3週ごと投与法)
症例の選択基準の目安
- 治療開始前には必ず臨床検査を実施し、可能な限り、【適正使用基準】を満たしていることを確認してください。
- 【適正使用基準】に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮してください。
なお、投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査を実施するとともに、患者の状態(PS、栄養状態等)を十分観察しながら、適宜減量する等慎重に投与してください。- (1)生理機能(骨髄、心、肺、肝、腎等)が十分保持されている症例
- (2)感染症又はその疑い(CRP異常、発熱、白血球異常増多)のない症例
項目 | 適正使用基準*1 | |
---|---|---|
ECOG Performance Status(PS) | PS 0~2 | |
骨髄機能 | 白血球数(/mm3) | ≧4,000、≦12,000 |
好中球数(/mm3) | ≧2,000 | |
血小板数(/mm3) | ≧100,000 | |
ヘモグロビン値(g/dL) | ≧9.0 | |
肝機能 | AST(GOT)、ALT(GPT) | ≦ULN*2×2.5倍*3 |
総ビリルビン値(mg/dL) | ≦1.5 | |
腎機能 | クレアチニン値(mg/dL) | ≦1.5 |
心機能 | 心電図 | 臨床上問題となる異常所見なし |
神経障害 | 末梢神経障害 | ≦Grade 1*4 |
- *1 承認時評価対象試験(A法:国内第Ⅰ相試験)1)における投与患者の選択基準等を参考に設定
- *2 ULN;(施設)基準値上限
- *3 原疾患に起因又は肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
- *4 症状がない;深部腱反射の低下又は知覚異常(CTCAE v4.0-JCOG)
- 1)Yamada, K. et al.: Jpn. J. Clin. Oncol., 2010, 40(5), 404-411; 承認時評価資料
治療期間中の注意
●次コース開始時(Day 1)の注意
- ①2コース目以降の投与は必ず臨床検査、患者状態を確認し、可能な限り【次コース開始基準】に該当していることを確認してください。
- ②【次コース開始基準】に該当しない場合は投与を延期し、回復・軽快したことを確認して次コースの投与を開始してください。
- ③前コースでの副作用の発現状況(発現時期、程度)を考慮し、投与の可否、投与量の減量を検討してください。
減量・再開の目安
- ①前コースで【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
【次コース開始基準】に回復・軽快するまで投与を延期し、〈減量の目安:A法〉を参考に減量し投与してください。 - ②末梢神経障害
末梢神経障害はGrade 2以下であっても、減量を考慮してください。
(乳癌の使用成績調査1)では、減量や処置等により回復・軽快した症例が認められています。)
項目 | 減量基準 | 次コース開始基準 |
---|---|---|
好中球数(/mm3) | <500* | ≧1,500 |
発熱性好中球減少症 | 発現 | 認めない/回復 |
血小板数(/mm3) | <50,000 | ≧100,000 |
肝機能値(AST、ALT) | 医師が同一用量で投与継続困難と判断 | ≦ULN×2.5倍 |
末梢神経障害 | ≧Grade 3 | ≦Grade 1 |
皮膚障害 | ≧Grade 2 | ≦Grade 1 |
粘膜炎又は下痢 | ≧Grade 3 | ≦Grade 1 |
非血液学的毒性(脱毛は除く) | ≧Grade 3 | ≦Grade 2 |
- * 添付文書には「好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合は投与量を減量すること」と記載している
【減量基準】/【次コース開始基準】以外で減量/投与延期が必要な場合は医師判断で減量/延期してください。
1)アブラキサン点滴静注用100mg使用成績調査, 社内資料, 2014年
〈減量の目安:A法〉
減量段階 | 投与量 |
---|---|
通常投与量 | 260mg/m2 |
1段階減量 | 220mg/m2 |
2段階減量 | 180mg/m2 |
上記以外で減量/投与延期が必要な場合は医師判断で減量/延期してください。