製品情報

製剤の特性

アブラキサン粒子

アブラキサンはパクリタキセルと人血清アルブミンからなる130nmの均一なナノ粒子製剤で、用時、生理食塩液で懸濁して投与する凍結乾燥注射剤です。

アブラキサンは、パクリタキセルを人血清アルブミンに結合させたことにより、ポリオキシエチレンヒマシ油及びエタノール等の溶媒を使用しない製剤化が実現し、下記の特性・利便性が得られました。

アブラキサン粒子

  • アルコールを使用していません。
  • ステロイド剤や抗ヒスタミン剤の前投薬が必須ではありません。
  • 点滴静注時間は30分です。
  • 可塑剤としてDEHP*を含有する点滴セットの使用が可能です。

*DEHP[フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)]:ポリ塩化ビニル(PVC)製の輸液セットや血液バッグ等の柔軟性保持のための可塑剤。DEHPは非臨床試験(げっ歯類)において精巣毒性、生殖発生毒性が確認されている。この可塑剤は使用する薬剤に依存してDEHPが溶出することから、特に脂溶性の高い薬剤を使用する場合には、代替品へ切り替える旨の通知が発出されている。平成14年10月17日付、医薬安発第1017002号「ポリ塩化ビニル製の医療用具から溶出する可塑剤(DEHP)について」

アブラキサンの体内動態(モデル図)

アブラキサンは投与後血液中で速やかに崩壊します。
崩壊したアブラキサンは、速やかに組織移行し、より多くのパクリタキセルを腫瘍組織に輸送することが可能となりました。

アブラキサンの体内動態(モデル図)

開発の経緯

本剤は、米国において2005年に乳癌、2012年には非小細胞肺癌、2013年には膵癌の承認を取得しました。世界での承認国数は、2021年1月時点で乳癌は74ヵ国、非小細胞肺癌は66ヵ国、膵癌は71ヵ国です。

本邦においては、固形癌患者を対象とした国内第Ⅰ相試験及び乳癌患者を対象とした海外第Ⅲ相試験の結果に基づき、2010年7月に乳癌の承認を取得しました。続いて、2013年2月には2007年より実施された国際共同第Ⅲ相試験の結果に基づいて非小細胞肺癌の効能・効果の追加承認を、2008年より実施された国内第Ⅱ相試験(単独投与)の結果に基づいて胃癌の効能・効果の追加承認を、それぞれ取得しました。

また、2014年12月には2009年より実施された海外第Ⅲ相試験及び2012年より実施された国内第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果に基づいて優先審査を受け、治癒切除不能な膵癌の効能・効果の追加承認を取得しました。

そして2017年8月、2013年より実施された国内第Ⅲ相試験の結果に基づき、胃癌に対する毎週投与法の追加承認を取得し、2018年11月、2016年より実施された国内第Ⅱ相試験(本剤とラムシルマブとの併用投与)の結果に基づいて胃癌に対する本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用に関する使用上の注意が改訂されました。

2019年9月には、2016年より中外製薬株式会社にて実施された国際共同第Ⅲ相試験(本剤とアテゾリズマブ(遺伝子組換え)との併用投与)の結果に基づき、乳癌に対するアテゾリズマブとの併用における毎週投与法の追加承認を取得し、さらに2021年8月には、2016年よりMSD株式会社にて実施された国際共同第Ⅲ相試験(本剤とペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(以下、ペムブロリズマブ)との併用投与)の結果に基づき、乳癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用における毎週投与法の追加承認を取得しました。

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