胃癌

適正使用に関するお願い

アブラキサン(本剤)は、人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させた製剤です。
投与方法、適応症、薬物動態、副作用発現頻度等が他のパクリタキセル製剤と異なりますので、投与に際しては、十分ご留意ください。

*「他のパクリタキセル製剤」とは添加物としてポリオキシエチレンヒマシ油及び無水エタノールを使用しているパクリタキセル製剤のことを指します。

「適正使用ガイド」では、胃癌に対する本剤の治療を安全かつ適正に行っていただくために、症例選択、投与方法、治療開始前~治療期間中の注意事項、副作用とその対策、患者さんへの説明、調製方法等について解説しています。
本剤の投与に際しては、最新の添付文書及び適正使用ガイドをご参照の上、適正使用をお願い致します。
投与に際しては、以下の項目について十分ご留意ください。

効能又は効果

乳癌、〇胃癌、〇非小細胞肺癌、〇治癒切除不能な膵癌

効能又は効果に関連する注意(抜粋)

〈効能共通〉
  • 本剤の手術の補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。

用法及び用量(抜粋)

胃癌にはA法又はD法を使用する。

  • A法:
    通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回260mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。
    なお、患者の状態により適宜減量する。
  • D法:
    通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。
    なお、患者の状態により適宜減量する。

用法及び用量に関連する注意(抜粋)

  • ① 本剤の投与にあたっては下記に留意し、必要に応じ休薬、減量を実施すること。
    ・A法
    好中球数及び血小板数の変動に十分留意し、次コース投与前の臨床検査で好中球数が1,500/mm3未満又は血小板数が100,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまで投与を延期すること。投与後、好中球数が7日間以上にわたって500/mm3未満となった場合、血小板数が50,000/mm3未満となった場合、又は発熱性好中球減少症が発現した場合、次コースの投与量を減量すること。
    また、高度(Grade 3)な末梢神経障害が発現した場合には、軽快又は回復(Grade 1以下)するまで投与を延期し、次回の投与量を減量すること。
    ・D法
    好中球数及び血小板数の変動に十分留意し、投与前の臨床検査で好中球数が1,000/mm3未満又は血小板数が75,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまで投与を延期すること。
    本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用の場合は、第1日目の投与前の臨床検査で好中球数が1,500/mm3未満又は血小板数が100,000/mm3未満であれば、骨髄機能が回復するまで投与を延期すること。
    投与後、好中球数が500/mm3未満となった場合、血小板数が25,000/mm3未満となった場合、又は発熱性好中球減少症が発現した場合には、次回の投与量を減量すること。
    また、高度(Grade 3)な末梢神経障害が発現した場合には、軽快又は回復(Grade 2以下)するまで投与を延期し、次回の投与量を減量すること。
    ・減量の目安
    減量段階 A法 D法
    通常投与量 260mg/m2 100mg/m2
    1段階減量 220mg/m2 80mg/m2
    2段階減量 180mg/m2 60mg/m2
  • ② 胃癌及び非小細胞肺癌においては、本剤と併用する他の抗悪性腫瘍剤は「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、選択すること。
  • ③ 胃癌においては、本剤の用法・用量は「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、選択すること。特に、A法の実施にあたっては、D法の実施についても検討すること。

胃癌で注意を要する副作用

  • 末梢神経障害
    発現頻度の高い副作用です。投与中止・延期又は休薬することがあり、次回以降の減量を必要とすることがあります。
  • 骨髄抑制
    骨髄抑制は用量制限毒性(DLT)です。
    投与中止・延期又は休薬することがあり、次回以降の減量を必要とすることがあります。
    骨髄抑制の持続により発熱性好中球減少症等の感染症の併発が報告されています。
  • 感染症
    好中球減少より重症感染症を併発し、死亡した症例が報告されています。
  • 黄斑浮腫
    視力低下等の患者の訴えを主治医が眼科医に相談し、黄斑浮腫が確認されました。
    処置が遅れると、視力障害が長期に持続する可能性があります。
  • 間質性肺疾患
    間質性肺炎、肺臓炎、びまん性肺胞障害等が報告されています。
    初期症状として発熱、咳嗽、息切れ、呼吸困難等があらわれています。

投与時

  • インラインフィルターは使用しないでください。
  • 他の薬剤等との配合又は同じ静注ラインでの同時注入はしないでください。

重要な基本的注意

本剤は添加物としてヒト血液由来成分(人血清アルブミン)を使用しているため、特定生物由来製品に該当します。

参考アブラキサン治療開始前・治療期間中の注意事項(A法:3週ごと投与法、D法:毎週投与法〈単独投与〉、D法:毎週投与法〈アブラキサン/ラムシルマブ併用投与〉)

A法(3週ごと投与法)

症例の選択基準の目安

初回投与Day 1

  • 治療開始前には必ず臨床検査を実施し、可能な限り、【適正使用基準】を満たしていることを確認してください。
  • 【適正使用基準】に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮してください。
    なお、投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査を実施するとともに、患者の状態(PS、栄養状態等)を十分観察しながら、適宜減量する等慎重に投与してください。
    • (1)生理機能(骨髄、心、肺、肝、腎等)が十分保持されている症例
    • (2)感染症又はその疑い(CRP異常、発熱、白血球異常増多)のない症例

治療期間中の注意

次コース Day 1

●次コース開始時(Day 1)の注意

  • ①2コース目以降の投与は必ず臨床検査、患者状態を確認し、可能な限り【次コース開始基準】に該当していることを確認してください。
  • 【次コース開始基準】に該当しない場合は投与を延期し、回復・軽快したことを確認して次コースの投与を開始してください。
  • ③前コースでの副作用の発現状況(発現時期、程度)を考慮し、投与の可否、投与量の減量を検討してください。

減量・再開の目安

  • 前コースで【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
    【次コース開始基準】に回復・軽快するまで投与を延期し、〈減量の目安:A法〉を参考に減量し投与してください。
  • 末梢神経障害
    末梢神経障害はGrade 2以下であっても、減量を考慮してください。
    (乳癌の使用成績調査では、減量や処置等により回復・軽快した症例が認められています。)

【減量基準】/【次コース開始基準】以外で減量/投与延期が必要な場合は医師判断で減量/延期してください。

*アブラキサン点滴静注用100mg使用成績調査, 社内資料, 2014年

A法 3週ごと投与法・投与スケジュール

  • *1 原疾患に起因又は肝転移を有する場合は、各施設基準値上限(ULN)の5倍まで許容する

上記以外で減量/投与延期が必要な場合は医師判断で減量/延期してください。

D法(毎週投与法:単独投与)

症例の選択基準の目安

初回投与Day 1

  • 治療開始前には必ず臨床検査を実施し、可能な限り、【適正使用基準】を満たしていることを確認してください。
  • 【適正使用基準】に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮してください。
    なお、投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査を実施するとともに、患者の状態(PS、栄養状態等)を十分観察しながら、適宜減量する等慎重に投与してください。
    • (1)生理機能(骨髄、心、肺、肝、腎等)が十分保持されている症例
    • (2)感染症又はその疑い(CRP異常、発熱、白血球異常増多)のない症例

治療期間中の注意

●コース内投与時(Day 8、15)の注意

投与Day 8

①Day 8:【コース内投与基準】に該当しない場合
本剤の投与をスキップし、回復・軽快したことを確認してDay 15の投与を行ってください。

Day 15

②Day 15:【コース内投与基準】に該当しない場合
本剤の投与をスキップし、回復・軽快したことを確認し、Day 22以降に次コースのDay 1として投与を行ってください。

次コース Day 1

●次コース開始時(Day 1)の注意

  • ①2コース目以降の投与は必ず臨床検査、患者状態を確認し、可能な限り【次コース開始基準】に該当していることを確認してください。
  • 【次コース開始基準】に該当しない場合は投与を延期し、回復・軽快したことを確認して次コースの投与を開始してください。
  • ③前コースでの副作用の発現状況(発現時期、程度)を考慮し、投与の可否、投与量の減量を検討してください。

減量・再開の目安

2回目以降の本剤投与時に【減量基準】に該当する副作用が認められた場合は、副作用の回復・軽快を確認後、投与量を減量し、再開してください。

  • 同一コースの前回投与後、【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
    【コース内投与基準】に回復・軽快するまで投与をスキップし、〈減量の目安:D法〉を参考に減量し投与してください。
  • 前コースの最終投与後、【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
    【次コース開始基準】に回復・軽快するまで投与を延期し、〈減量の目安:D法〉を参考に減量し投与してください。
  • 末梢神経障害
    末梢神経障害はGrade 2以下であっても、減量を考慮してください。
    (乳癌の使用成績調査では、減量や処置等により回復・軽減した症例が認められています。)

【減量基準】/【コース内投与基準】/【次コース開始基準】以外で減量/投与延期/投与スキップが必要な場合は医師判断で減量/延期/スキップしてください。

*アブラキサン点滴静注用100mg使用成績調査, 社内資料, 2014年

D法 毎週投与法・投与スケジュール

  • *1 原疾患に起因又は肝転移を有する場合は、各施設基準値上限(ULN)の5倍まで許容する
  • 注1)Day 8の投与がスキップされ、かつDay 15の投与もスキップされる場合は、Day 22以降に次コースのDay 1の投与を行う。
    Day 15の投与がスキップされる場合は、Day 22以降に次コースのDay 1の投与を行う。
  • 注2)Day 15の投与を行った後、Day 22は投与を行わず、Day 29(次コース予定日)に次のコースを開始する。

上記以外で減量/投与延期/投与スキップが必要な場合は医師判断で減量/延期/スキップしてください。

D法(毎週投与法:アブラキサン/ラムシルマブ併用投与)

症例の選択基準の目安

初回投与Day 1

  • 治療開始前には必ず臨床検査を実施し、可能な限り、【適正使用基準】を満たしていることを確認してください。
  • 【適正使用基準】に該当しない場合には回復するまで投与の延期を考慮してください。
    なお、投与を必要とする場合には、頻回の臨床検査を実施するとともに、患者の状態(PS、栄養状態等)を十分観察しながら、適宜減量する等慎重に投与してください。
    • (1)生理機能(骨髄、心、肺、肝、腎等)が十分保持されている症例
    • (2)感染症又はその疑い(CRP異常、発熱、白血球異常増多)のない症例

治療期間中の注意

投与Day 8

●コース内投与時(Day 8、15)の注意

①Day 8:【アブラキサンコース内投与基準(Day 8)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップし、回復・軽快したことを確認してDay 15の投与を行ってください。

Day 15

②Day 15:【アブラキサンコース内投与基準(Day 15)】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップし、回復・軽快したことを確認し、Day 29以降に次コースの投与を行ってください(次コース開始時(Day 1)の注意参照)。

③Day 15:【ラムシルマブ投与基準】に該当しない場合
ラムシルマブの投与を延期し、回復・軽快したことを確認してDay 22に投与を行ってください。

次コース Day 1

●次コース開始時(Day 1)の注意

2コース目以降の投与は必ず臨床検査、患者状態を確認し、【アブラキサン次コース開始基準】及び【ラムシルマブ投与基準】に該当していることを確認してください。【アブラキサン次コース開始基準】及び【ラムシルマブ投与基準】に該当しない場合は投与を延期し、回復・軽快したことを確認して次コースの投与を開始してください。また、前コースでの副作用の発現状況(発現時期、程度)を考慮し、投与の可否、投与量の減量を検討してください。

①Day 1:【アブラキサン次コース開始基準】に該当しない場合
アブラキサンの投与をスキップし、回復・軽快したことを確認してDay 8に投与を行ってください。

②Day 1:【ラムシルマブ投与基準】に該当しない場合
ラムシルマブの投与を延期し、回復・軽快したことを確認してDay 8に投与を行ってください。

減量・再開の目安

2回目以降のアブラキサン又はラムシルマブ投与時に【アブラキサン減量基準】又は【ラムシルマブ用法・用量調節基準】に該当する副作用が認められた場合は、副作用の回復・軽快を確認後(前回投与以降に認められた副作用(投与スケジュール参照))、投与量を調節し、再開してください。

  • 同一コースの前回投与後、【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
    【アブラキサンコース内投与基準】【ラムシルマブ投与基準】に回復・軽快するまで投与をスキップし、〈減量の目安:D法〉を参考に減量し投与してください。
  • 前コースの最終投与後、【減量基準】に該当する副作用が認められた場合
    【アブラキサン次コース開始基準】【ラムシルマブ投与基準】に回復・軽快するまで投与を延期し、〈減量の目安:D法〉を参考に減量し投与してください。
  • 末梢神経障害
    末梢神経障害はGrade 2以下であっても、減量を考慮してください。
    (乳癌の使用成績調査では、減量や処置等により回復・軽減した症例が認められています。)

【減量基準】/【アブラキサンコース内投与基準】/【アブラキサン次コース開始基準】以外で減量/投与延期/投与スキップが必要な場合は医師判断で減量/延期/スキップしてください。

*アブラキサン点滴静注用100mg使用成績調査, 社内資料, 2014年

D法 毎週投与法:アブラキサン/ラムシルマブ併用投与・投与スケジュール

  • *1 ラムシルマブとの併用投与試験(D法:国内第Ⅱ相試験)における投与患者の選択基準等を参考に設定
  • *2 ULN;(施設)基準値上限 
  • *3 原疾患に起因又は肝転移を有する場合は、各施設基準値上限の5倍まで許容する
  • *4 ≧2+の場合は定量検査で1g未満であれば適格とする
    なお、定量検査は24時間蓄尿による全尿検査が望ましいが、実施困難な場合は以下の尿蛋白/クレアチニン比を用いて尿蛋白排泄量を推定する
    尿蛋白/クレアチニン比=随時尿の尿蛋白定量結果(mg/dL)/尿中クレアチニン濃度(mg/dL)
  • *5 症状がない;深部腱反射の低下又は知覚異常(CTCAE v4.0-JCOG)

上記以外で減量/投与延期/投与スキップが必要な場合は医師判断で減量/延期/スキップしてください。

D法(毎週投与法:アブラキサン/ラムシルマブ併用投与)の安全性上の注意事項

●アブラキサン毎週投与群(D法:単独投与)と比較してアブラキサン/ラムシルマブ併用投与で発現率が高かった有害事象

対象患者が異なるため、単純な比較はできませんが、国内第Ⅱ相試験(J-0202試験)において、国内第Ⅲ相試験(J-0301試験)のアブラキサン毎週投与群(D法:単独投与)と比較してアブラキサン/ラムシルマブ併用投与で発現率が高かった有害事象は以下の通りであり、注意をお願いします。

試験結果

  • 国内第Ⅲ相試験(J-0301試験)のアブラキサン毎週投与群(D法:単独投与)と比較して、国内第Ⅱ相試験(J-0202試験)のアブラキサン/ラムシルマブ併用投与(アブラキサン/ラムシルマブ)で発現率が10%以上高かった有害事象(全Grade)
    • 好中球数減少[アブラキサン/ラムシルマブ:39/43例(90.7%)、D法(単独投与):158/241例(65.6%)]
    • 鼻出血[アブラキサン/ラムシルマブ:20/43例(46.5%)、D法(単独投与):11/241例(4.6%)]
    • 浮腫[アブラキサン/ラムシルマブ:8/43例(18.6%)、D法(単独投与):8/241例(3.3%)]
  • 国内第Ⅲ相試験(J-0301試験)のアブラキサン毎週投与群(D法:単独投与)と比較して、国内第Ⅱ相試験(J-0202試験)のアブラキサン/ラムシルマブ併用投与で発現率が10%以上高かった有害事象(Grade 3以上)
    • 好中球数減少[アブラキサン/ラムシルマブ:33/43例(76.7%)、D法(単独投与):99/241例(41.1%)]

対策

好中球数減少の発現頻度及び程度がアブラキサン毎週投与群(D法:単独投与)と比較して高い傾向が認められておりますので、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて本剤の減量、延期、G-CSF製剤投与等の適切な処置を行ってください。

大鵬薬品