おもな副作用と対処法
アブラキサンのおもな副作用は?
- すべての副作用があらわれるということではなく、発現時期や程度は患者さんによってさまざまです。
- 副作用には、自分でわかるものと、検査でわかるもの(白血球減少、貧血、血小板減少など)があります。
- あらかじめ予想される副作用を知り、対策を立てておけば、予防したり、症状を軽くしたりすることもできます。また、副作用があらわれても早めに適切に対処することにより、症状が重くなるのを防ぐことができます。
- 以下に記載の肺がんにおける副作用の頻度は、アブラキサンとカルボプラチン併用(1次治療)およびアブラキサン単剤(2次治療以降)の数値を記載しています。
- 「1次治療」とは、再発または転移のある肺がんに対して最初に行う薬物療法のことです。1次治療で十分な効果が得られない、または副作用のために続けるのが難しい場合には、別の薬物療法に変更します。2番目に行う治療を「2次治療」、3番目に行う治療を「3次治療」といいます。最初に薬物療法を始めるときのほうが全身の状態がよいため、2次治療以降のほうが副作用の頻度が高くなる傾向があります。
骨髄抑制
血液中には白血球(好中球)、赤血球、血小板などの成分が含まれ、これらは骨髄で作られています。骨髄は抗がん剤による影響を受けやすく、治療中は骨髄抑制という副作用があらわれます。骨髄抑制は自分ではわかりにくいため、血液検査で定期的にチェックする必要があります。
白血球減少「感染症」
単剤:75%(重い症状:26%)
あらわれる頻度
白血球(特に好中球)が減少すると、抵抗力が低下して、感染症にかかりやすくなったり、ときには全身の感染症を引き起こすことがあります。
このような症状があらわれたら、すぐに、担当の医師、看護師または薬剤師に連絡しましょう。
- 38℃以上の発熱、さむけ
- せき、のどの痛み
- 排尿時の痛み、血尿・頻尿、排尿後も尿が残る感じ など
ワンポイントアドバイス
- 白血球減少は、自分ではわかりにくいため、担当の医師の指示に従い定期的に血液検査を受けましょう。
感染予防
- 手洗い・うがいをこまめに行いましょう。
- からだや口の中を清潔に保ちましょう。
- 栄養と睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を心がけましょう。
- 人混みはさけましょう。
貧血(ヘモグロビン減少)
単剤:98%(重い症状:5%)
あらわれる頻度
赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなることがあります。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶはたらきをするため、少なくなると全身に酸素が十分いきわたらなくなり、貧血症状(めまいなど)を感じることがあります。
このような症状があらわれたら、担当の医師、看護師または薬剤師に相談しましょう。
- 手足が冷たい
- 疲労・倦怠感
- 顔色が悪く青白い
- 動悸・息切れ
- めまい・立ちくらみ
ワンポイントアドバイス
- 十分な休養・睡眠をとり、無理をしないようにしましょう。
- ゆっくりとした動き(立ち上がる、起き上がる、歩く)をしましょう。
- めまいを感じたらしゃがみ、そしてゆっくり歩きましょう。
- 良質のたんぱく質、鉄分などをとりましょう。
血小板減少「出血傾向」
単剤:24%
あらわれる頻度
血小板の数が少なくなることがあります。
血小板は出血を止めるはたらきがあるため、出血しやすくなったり、ちょっとしたキズでも出血が止まりにくくなったりします。
このような症状があらわれたら、すぐに、担当の医師、看護師または薬剤師に連絡しましょう。
- 内出血(あざ)
- 歯みがきなどによる口の中の出血
- 鼻血(鼻かみによる粘膜の出血)
ワンポイントアドバイス
- アルコールは血液を固まりにくくするので、控えましょう。
出血の予防
- 歯みがきや鼻かみはやさしく、排便時はりきみすぎないようにしましょう。
- ゆったりして、しめつけない衣服を着ましょう。
- 転んだり、けがをしたりしないように注意しましょう。
手足のしびれ(末梢神経障害)
単剤:56%(重い症状:10%)
あらわれる頻度
手足のしびれ、手足のびりびり感、手足の刺すような痛み、感覚が鈍くなる、ボタンがかけづらいなどの症状があらわれ、治療を続けていくと症状が強くなることがあります。
ワンポイントアドバイス
- 感覚が鈍くなるので、やけどや打撲に注意しましょう。
- 足にしびれがあるときは、転ばないように注意し、階段の昇り降りにも気をつけましょう。
- つらいときはまわりの人に手伝ってもらいましょう。
対 策
- アブラキサンを減量したり、投与を休むなど治療スケジュールを変更することがあります。
関節や筋肉の痛み
筋肉の痛み併用:9%(重い症状:1%未満)
あらわれる頻度
関節の痛みを感じたり、肩や背中、腰や腕などの筋肉が痛くなることがあります。
ワンポイントアドバイス
- 痛みのある部分を温めましょう(入浴や温湿布)。
- 血行を促進させるために、からだの中心に向かってマッサージをしましょう。
- 無理をしない程度に、軽くからだを動かしましょう。
対 策
- 痛みが強いときは痛み止め薬の投与を検討しますので、担当の医師、看護師または薬剤師に相談しましょう。
吐き気・嘔吐
嘔 吐併用:11%(重い症状:1%未満)
あらわれる頻度
むかむかしたり、場合によっては吐いてしまうことがあります。
このような症状があらわれたら、担当の医師、看護師または薬剤師に相談しましょう。
- 症状が強い
- 症状が長く続いている
- 食事や水分がほとんどとれない
ワンポイントアドバイス
- 無理をせず、少量ずつ食べられるものをとりましょう。
- 脱水症状にならないよう、水分をとりましょう。
吐き気の予防
- においの強い料理はさけましょう(揚げ物、煮物、煮魚など)。
- 料理は冷やしたり、さましてから食べましょう。
- 食事はゆっくり時間をかけ、少量ずつ食べられるものをとりましょう。
対 策
- 吐き気を抑える薬(制吐剤)の投与を検討しますので、担当の医師、看護師または薬剤師に相談しましょう。
下 痢
あらわれる頻度
腸の粘膜が薬により傷害をうけ、下痢が起こることがあります。下痢が続くと脱水症状になりやすいので、注意が必要です。
このような症状があらわれたら、担当の医師、看護師または薬剤師に相談しましょう。
- 激しい下痢
- 1日の排便回数がふだんよりも4回以上増加
- 下痢が長く続く
ワンポイントアドバイス
- ふだんの便通状態をチェックしておきましょう。
- 食物繊維、脂肪分の多い食べ物、牛乳や乳製品をさけましょう。
- 香辛料や炭酸飲料などの刺激物をさけましょう。
脱水症状の予防
- 水分をこまめにとりましょう。
- スポーツ飲料などで電解質*を補給しましょう。
- 消化のよいもの(おかゆ、うどんなど)、カリウムの多い食品(バナナなど)をとりましょう。
- *
- 下痢によって電解質(ナトリウム・カリウム)が水分と一緒に排泄されてしまいます。
脱 毛
あらわれる頻度
薬の投与を始めて数週間後くらいから、髪の毛や体毛が抜け始めます。治療が終了すると髪の毛はまた生え始め、1年程度でほぼ回復します。治療前の髪質と異なる場合がありますが、やがて以前の髪質に戻るといわれています。
ワンポイントアドバイス
- 帽子やウィッグ(かつら)、スカーフやバンダナを活用しましょう。
- あらかじめ短めの髪型にしておくと、抜け毛が気になりにくくなります。
- シャンプーは刺激の少ないものでやさしく洗いましょう。
- ブラシやくしは、頭皮にやさしいものを選びましょう。
間質性肺炎
単剤:9%(重い症状:4%)
あらわれる頻度
肺の間質という部分に炎症が起こり、肺の機能が低下することがあります。あらわれる頻度は100人に1人程度ですが、注意が必要な副作用です。
このような症状があらわれたら、すぐに、担当の医師、看護師または薬剤師に連絡しましょう。
- 痰が出ないせき(空せき)
- 息が苦しい
- 息切れ
- 発熱
ワンポイントアドバイス
- せき、息切れ、発熱など、かぜによく似た症状が起こることがあります。かぜをひいたと自分で判断しないで、すぐに担当の医師に連絡しましょう。
黄斑浮腫
あらわれる頻度
視力の低下(目がかすむ)、ものがゆがんで見える、視野の中に見えない部分がある、といった症状があらわれることがあります。放置しておくと重症となり、元に戻りにくくなるので、早めに対処することが大切です。
ワンポイントアドバイス
- 黄斑浮腫による見え方の異常は、「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の線を見ることで、セルフチェックができます。
- もし下記のような見え方の異常がある場合は、早めに担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
<見え方のイメージ>
アムスラーチャート
- 検査はメガネをかけたままで片目ずつ行います。
- 片方の目は手でおおいかくします。
- チェックする側の目は、約30cmはなしてまん中の点を見るようにします。
その他の副作用
ほかにも、下記のような症状があらわれた場合は、担当の医師、看護師または薬剤師に相談、連絡しましょう。
神 経 | 顔面神経麻痺(しゃべりにくい、まばたきしにくい、食べにくい、よだれが出る) |
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聴 覚 | 聞こえにくい、耳鳴りがする |
心 臓 | 動悸、胸が痛む、低血圧、高血圧 |
呼吸器 | せきが続く、息苦しい |
肝 臓 | 肝機能障害(からだがだるい、疲れやすい、食欲がない、白目や皮膚が黄色くなる) |
腎 臓 | 尿が出なくなる、血尿 |
皮 膚 | やけどのような水ぶくれ、口や目の粘膜のただれ |
ここにあげたこと以外でも、気になる症状や、いつもと違う症状があらわれた場合には、「治療日記」に忘れずに記録して、その症状を担当の医師、看護師または薬剤師に伝えましょう。