治療に使われるのはどんな薬?
アブラキサンとは?
アブラキサンは、溶媒(アルコールなど)が必要な「パクリタキセル」という抗がん剤にたんぱく質の一種であるアルブミンを加えた薬剤です。治療前にアレルギーの予防薬(ステロイドなど)を投与する必要がなく、30分で投与可能な注射薬です。
パクリタキセル(有効成分)
- タキサンと呼ばれるグループに属する抗がん剤です。
- がん細胞の分裂を途中で止めるはたらきがあり、がん細胞の増殖を抑制します。
アルブミン(添加物)
- アルブミンは、血液の中にある主要なたんぱく質の一種です。
- アブラキサンで使用しているアルブミンはヒトの血液を原料としているため、製造する過程でウイルス等の感染防止対策を行っています(Q&A Q2「アルブミンの感染防止対策って何ですか?」を参照してください)。
- パクリタキセルはほとんど水に溶けないため、ポリオキシエチレンヒマシ油、アルコールなどの溶媒を添加していました。この溶媒がアレルギーを引き起こします。アブラキサンはアルブミンを加えることで溶媒添加が不要になりました。
- アブラキサンは非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、治癒切除不能な膵がんの治療に使用されます。
- がん細胞にはたらき、がんの進行を抑えます。
- がんによって起こる症状をやわらげます。
ペムブロリズマブとは?
ペムブロリズマブは「抗PD-1抗体」と呼ばれる免疫チェックポイント阻害薬です。
私たちの体には、ウイルスや細菌などが体内に侵入すると、それを撃退する「免疫」というはたらきが備わっています。免疫はがん細胞に対しても攻撃しますが、がん細胞は免疫をつかさどる「T細胞」という細胞にブレーキをかけ、免疫の攻撃から逃れています。
ペムブロリズマブは、T細胞の表面にある「PD-1」という分子に結合し、ブレーキをかけている信号を遮断します。その結果、T細胞が活性化されてがん細胞への攻撃を再開し、抗がん作用が発揮されると考えられています。
カルボプラチンとは?
カルボプラチンは、貴金属である白金(プラチナ)を含む化合物で、「プラチナ製剤」と呼ばれる抗がん剤の一種です。カルボプラチンは、がん細胞内のDNAの合成を阻害し、がん細胞が分裂、増殖するのを抑える薬です。
治療を受けられない可能性のある方
以下の項目に該当する方は、アブラキサンとカルボプラチン、ペムブロリズマブの併用治療を受けられない可能性があります。心あたりのある方は前もって担当の医師や看護師、薬剤師にご相談ください。
- アブラキサン、パクリタキセル、アルブミンに対して、過敏症症状を起こしたことがある方
- ペムブロリズマブやカルボプラチンまたは他の白金製剤に対して、過敏症症状を起こしたことがある方
- 高度な骨髄抑制がある方
- 感染症にかかっている方
- 妊娠している、または妊娠している可能性がある方*
- *胎児への影響や流産が起きる可能性があります。治療中に妊娠がわかった場合も、必ず担当の医師や看護師、薬剤師にお伝えください。
カルボプラチン、ペムブロリズマブとの併用治療を受ける前に
以下の項目に該当する方は、治療を始める前に必ず担当の医師や看護師、薬剤師にお伝えください。
- 薬や食べ物にアレルギーがある
- 自己免疫疾患*1に現在かかっているか、過去に自己免疫疾患にかかったことがある
- 間質性肺疾患*2、肺線維症にかかっている、または以前にかかったことがある
-
水痘 (みずぼうそう)にかかっている - 現在、使用している薬がある
- 臓器移植または造血幹細胞移植*3をしたことがある
- 結核にかかっている、または以前にかかったことがある
- 妊娠している、または妊娠している可能性がある*4
- *1自己免疫疾患とは、本来自己には攻撃しないはずの免疫機能が、自分自身の身体や組織を攻撃してしまうことで生じる病態です。
- 例:膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎など)、クローン病、潰瘍性大腸炎、バセドウ病、橋本病、1型糖尿病など。
- *2 間質性肺疾患については特に注意すべき副作用「間質性肺疾患」をご参照ください。
- *3病気になった造血幹細胞(赤血球、白血球、血小板を作り出す細胞)を健康な造血幹細胞と入れ替え、正常な血液を作ることができるようにする治療です。
- *4 胎児への影響や流産が起きる可能性があります。治療中に妊娠がわかった場合も、必ず担当の医師や看護師、薬剤師にお伝えください。
投与方法
アブラキサン、カルボプラチン、ペムブロリズマブは、いずれも静脈から点滴します。
治療スケジュール
- 通常、3週間(21日間)がひと区切り(1サイクル)となっています。
- アブラキサンは1日目、8日目、15日目に毎週点滴を行います。
- ペムブロリズマブとカルボプラチンは1日目のアブラキサンの前後に投与し、3週ごとに点滴を行います。
<点滴のタイムスケジュール例>
<治療スケジュール>
点滴を受けているときに注意すること
点滴中や点滴直後にもアレルギーのような症状[点滴時の過敏症反応(
このような症状が起こった場合は、すぐに、担当の医師、看護師または薬剤師に知らせてください。
- 吐き気がする、気分が悪い、冷や汗が出る、さむけがする
- 息苦しい、のどがしめつけられる感じがする、心臓がドキドキする
- からだがかゆい、皮膚が赤くなる、ぶつぶつができる
- ※点滴終了後、1~2時間以内に症状があらわれる場合もあります。
このような症状が起こった場合は、すぐに、担当の医師、看護師または薬剤師に知らせてください。
- 点滴部位が痛い、熱感がある、違和感がある
- 周辺部位が赤くなる、腫れる