ワンポイントアドバイス
アドバイス一覧
このパートでは、副作用の症状があるときの生活の工夫やセルフケアのポイント、日常生活や医療費に関する情報のほか、アブラキサンとペムブロリズマブの効果のしくみなどについて紹介しています。
食欲がない
何か食べなくちゃ、何か作らなくちゃ、とは思うのですが…
食欲がないとき
- 食欲がないときは無理をせず、食べられるときに、食べられるものや好きなものを少しずつとるようにしましょう。
- 食事の量が減ると水分の摂取量が減って脱水状態になったり、からだの電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスが崩れてしまいます。スポーツ飲料や経口補水液などで水分を補給しましょう。
- においが強く感じられるときは、においの強い食材は控えましょう。また、熱いもののほうがにおいが強く感じられるため、少し冷ましてから食べるとよいでしょう。
- 味覚の変化や口内炎があるときは、口の中を清潔に保ち、乾燥させないよう、こまめにうがいをしましょう。
また、口内炎があるときは、やわらかい毛の歯ブラシや低刺激の歯磨き剤(研磨剤や発泡剤、清涼剤などを含まないもの)を使うとよいでしょう。
家族の食事の用意
- においで加熱調理がつらいときは、レトルトや冷凍食品を使ったり、電子レンジだけで調理できるレシピを活用するのもよいかもしれません。
- 家族には外で食べてもらったり、お惣菜やお弁当で済ませてもらうなど、協力をお願いしましょう。
脱毛、皮膚や爪の症状
ウィッグ選びやスキンケア、爪のケアはどうしたらいいですか?
脱毛(髪の毛、眉毛、まつ毛など)
- 帽子やウィッグ(かつら)、スカーフやバンダナを活用しましょう。あらかじめ短めの髪型にしておくと、お手入れしやすくなるかもしれません。
- シャンプーは刺激の少ないものでやさしく洗いましょう。
- ウィッグの選び方やつけ方、眉毛やまつ毛が抜けた後のメイクアップ方法などはひとりで悩まず、身近な医療スタッフに声をかけてみてください。
- 化粧品会社のホームページなどでも、脱毛や発疹、皮膚の黒ずみなど、がん治療中の患者さんの悩みをカバーするためのメイクアップ方法(女性向け、男性向け)が紹介されています。参考にするのもよいかもしれません。
皮膚や爪の症状
- 肌を清潔に保ち、保湿剤を使って皮膚の乾燥を防ぎましょう。
- 皮膚に負担をかけないため、過度の日焼けやけがをしないよう気をつけましょう。
- 手洗いの際は、爪と爪の間も洗いましょう。手洗い後は手だけでなく、爪全体にも保湿剤を塗るとよいでしょう。
- 爪の表面を保護するため、マニキュアやトップコート、液体ばんそうこうなどを活用してもよいかもしれません。
- 爪が弱くなっているときは、手袋や靴下で保護するとよいでしょう。また、変形した爪で皮膚を傷つけないように気をつけましょう。
下痢、便秘
下痢や便秘になることもあるようですが、自分でできることはありますか?
症状が出る前に
- お通じの変化に気づけるように、ふだんの便の回数や状態を「治療日記」に記録しておきましょう。
下痢になった場合
- 食物繊維や脂肪分の多い食べ物、牛乳や乳製品は避けましょう。
- 香辛料や炭酸飲料などの刺激物を避けましょう。
- 下痢が続くと脱水状態になりやすくなります。水分をこまめにとりましょう。
- スポーツ飲料や経口補水液などで電解質(ナトリウム、カリウム)を補給するとよいでしょう。
- 消化のよいもの(おかゆ、うどんなど)やカリウムの多い食品(バナナなど)をとりましょう。
便秘になった場合
- 水分をこまめにとり、食物繊維の多い食品をとりましょう。
- 腸の動きを活発にするため、軽い運動を心がけましょう。
- 便秘が続くときは我慢せず、担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
手足のしびれ、関節痛、筋肉痛
手足のしびれや関節痛、筋肉痛が出てきました。気をつけることはありますか?
手足のしびれ
- 感覚が鈍くなるので、やけどや打撲などに注意しましょう。
- 足にしびれがあると転びやすくなるので、足元に注意しましょう。階段の昇り降りにも気をつけましょう。
- 包丁やキッチンバサミなどの刃物を使うときは、手元に注意しましょう。
- カット済みの野菜や半調理済みの食品などを活用するのもよいでしょう。
関節痛、筋肉痛
- 入浴や温湿布などで痛みのある部分を温めましょう。
- 血行を促進させるため、からだの中心に向かってマッサージをしましょう。
- 無理をしない程度に軽くからだを動かしましょう。
- 飲料や洗剤などの重いもの、トイレットペーパーなどのかさばる日用品を買うときは、インターネット通販を利用するのもよいかもしれません。
日常生活について
日常生活で気をつけることはありますか?
外出、旅行
- 無理をしない程度での外出や旅行は、治療中の気分転換になり、ストレス解消にもなります。
- 緊急時の対処法などを担当の医師に相談しておくことをおすすめします。
- 外出先ではけがや転倒に気をつけて、外出先から戻ったときには、うがいや手洗いをして感染予防を心がけましょう。
新型コロナウイルス感染症に関する情報について
新型コロナウイルス感染症の広がりに関して、不安を抱えていらっしゃる方も多いと思います。わからないことや心配なことがありましたら、主治医にご相談ください。
また、以下のホームページでは新型コロナウイルス感染症やワクチン接種に関する情報など、がん患者さんやご家族の方に向けたさまざまな情報が掲載されていますので、ぜひご活用ください。
- 国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html
市販薬やサプリメント(健康食品)、民間療法の利用
- 薬の副作用を強くしたり、効果を弱くしたりする場合がありますので、利用する前には担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
妊娠、出産
- 妊娠中または妊娠の可能性がある場合には、アブラキサンを投与できません。また、アブラキサン投与中は授乳を中止してください。
- 妊娠する可能性のある女性、パートナーが妊娠する可能性のある男性は、アブラキサン投与中および投与終了後6ヵ月以上は適切な避妊をしてください。また、出血や感染症にも気をつけましょう。
- 妊娠を希望される場合は担当の医師や看護師、薬剤師に相談してください。
医療費について
がんの治療にはお金がかかると聞いています。心配です。
自己負担限度額を超えた分は払い戻されます
- 私たちが1ヵ月に支払う医療費の自己負担額は、「高額療養費」という制度によって上限金額(「自己負担限度額」といいます)が定められています。自己負担限度額は、年齢(70歳以上か未満か)や所得の水準によって異なります。
- 医療機関の窓口でいったん自己負担額の全額を支払った後、所定の手続きを行うと、3~4ヵ月後に自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。
「限度額適用認定証*」を申請しましょう
- 「限度額適用認定証*」を支払いの際に提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
- 高額療養費の払い戻しや限度額適用認定証の手続きの詳細、そのほかに利用可能な助成制度などについては、病院の相談窓口や、健康保険証に記載されている保険者までお問い合わせください。
- 高額療養費制度の詳しい内容については、パンフレット「高額療養費制度ってなあに?」でもご紹介しています。あわせてご覧ください。
- *住民税非課税の場合の認定証は「限度額適用・標準負担額減額認定証」になります。
参考情報:治療に使われるのはどんな薬?
アブラキサンとは?
アブラキサンは、溶媒(アルコールなど)が必要な「パクリタキセル」という抗がん剤にアルブミンを加えることで治療前にアレルギーの予防薬(ステロイドなど)を投与する必要がないため、30分で投与可能な注射薬です。また、アルコールを加えていませんので、アルコールに過敏な患者さんにも投与可能です。
パクリタキセル(有効成分)
- タキサンと呼ばれるグループに属する抗がん剤です。
- がん細胞の分裂を途中で止める働きがあり、がん細胞の増殖を抑制します。
アルブミン(添加物)
- アブラキサンに含まれるパクリタキセルは水にきわめて溶けにくいため、溶けやすくするためにアルブミンを加えています。
- アルブミンは、血液の中にある主要なたんぱく質の一種です。
- アブラキサンで使用しているアルブミンはヒトの血液を原料としているため、製造する過程でウイルス等の感染防止対策を行っています。
- アブラキサンの投与によってウイルス等に感染したという報告はこれまでありませんが、その危険性を完全に排除することはできません。気になる方は、担当の医師にご相談ください。
ペムブロリズマブとは?
ペムブロリズマブは「抗PD-1抗体」と呼ばれる免疫チェックポイント阻害薬です。
- 私たちのからだには、体内に侵入したウイルスや細菌などを撃退する「免疫」という働きが備わっています。本来、免疫はがん細胞に対しても攻撃を行います。
- ところが、がん細胞は免疫をつかさどる「T細胞」という細胞にブレーキをかけることで、攻撃から逃れています。このT細胞にブレーキをかけている経路の1つを「PD-1/PD-L1経路」といいます。
- ペムブロリズマブは、T細胞の表面にある「PD-1」という分子に結合し、ブレーキをかけている信号を遮断します。その結果、T細胞が活性化されてがん細胞への攻撃を再開し、抗がん作用が発揮されると考えられています。
特に具合が悪いときや、日常生活に支障が出て困っている場合は、次回の診察まで我慢せず、医療機関に連絡しましょう。
- 医療機関名
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- 担当医師名
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