副作用と対処法【特に注意が必要な副作用】
- このパートでは特に注意が必要な副作用を紹介しています。ここで紹介する副作用の多くは、頻度は高くないものの、ときに命にかかわる症状を引き起こすこともあります。
- 特に具合が悪いときは我慢せず、すぐに担当の医師や看護師、薬剤師に連絡してください。
- ご家族や周囲の方にもどのような症状が起こる可能性があるのか伝えておくとよいでしょう。
副作用のあらわれる頻度は、乳がん患者さんを対象としたアブラキサンとペムブロリズマブ併用療法の臨床試験の結果をもとに記載しています。
特に注意が必要な副作用
内分泌障害
からだのバランスを保つホルモンを分泌する器官(甲状腺、下垂体、副腎など)に障害が起こることがあります。
甲状腺機能障害
甲状腺機能亢進症:5%
あらわれる頻度
からだの新陳代謝を高めるホルモンを作る甲状腺に障害が起こることがあります。それにより、血液中の甲状腺ホルモン値が低下したり、上昇したりして、下記のような症状があらわれます。
<甲状腺ホルモン値が低下した場合(甲状腺機能低下症)>
食事の量に関係なく体重が増加したり、疲れやすくなる、声がかすれる、顔や脚がむくむ、さむがりになる、便秘などの症状があらわれます。また、ものごとにおっくうになったり、めんどうに感じることがあります。
<甲状腺ホルモン値が上昇した場合(甲状腺機能
食事の量に関係なく体重が減少したり、脈拍の乱れ、発汗、ふるえなどの症状があらわれます。
副腎機能障害
あらわれる頻度
副腎由来のホルモンが低下し、さまざまな症状が出ることがあります。
具体的には、からだがだるくなる、食欲低下、むかむかする、吐き気、嘔吐、下痢、血圧の低下、発熱、体重減少などの症状があります。また、無気力になる、不安が強くなるなどの性格の変化や、眠気、爪の先や関節が黒ずむといった症状があらわれることもあります。急性の場合は意識がうすれることがありますので、注意が必要です。
下垂体機能障害
さまざまなホルモンの働きをコントロールする脳の下垂体に障害が起こり、下垂体ホルモンが低下することがあります。
下垂体ホルモンが低下すると、頭痛、疲れやすい、食欲不振といった症状があらわれます。口の中やのどが渇きやすい、水分摂取量の増加、トイレが近くなるなど、1型糖尿病に似た症状があらわれることもあります。このほか、月経がない、乳汁が出る、ものが見えにくいといった症状があらわれることもあります。
特に注意が必要な副作用
劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎
AST増加:12%
あらわれる頻度
肝機能障害が進行すると、白目や皮膚が黄色くなる「
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
特に注意が必要な副作用
間質性肺疾患
あらわれる頻度
肺の間質という部分に炎症が起こり、肺の機能が低下することがあります。痰を伴わないせき(空せき)や、息切れ、息苦しさ、発熱など、かぜに似た症状があらわれます。進行すると呼吸がしにくくなり命にかかわることもあるので、かぜをひいたと自分で判断しないで、担当の医師や看護師、薬剤師に相談してください。
特に注意が必要な副作用
大腸炎、小腸炎、重度の下痢
重度の下痢:2%
あらわれる頻度
腸の粘膜に炎症が起こって出血したり、重度の下痢が起こることがあります。1日の便の回数がふだんより4回以上増えた、血や粘液が混じった便が出る、刺すようなおなかの痛みがある、吐き気や嘔吐をともなう、といった症状があらわれます。
特に注意が必要な副作用
重度の皮膚障害
アブラキサンとペムブロリズマブの併用療法では、しばしば皮膚が乾燥してかゆみが生じたり、皮膚の一部に小さな赤い発疹ができることがあります。
しかし、ごくまれに全身に赤い斑点や水ぶくれができる、ひどい口内炎、くちびる・粘膜のただれといった重度の皮膚障害が起こることがあります。また、体がだるい、まぶたや目の充血、発熱などの症状をともなうこともあります。
特に注意が必要な副作用
腎機能障害
腎臓に炎症が生じ、機能が低下することがあります。症状が進行すると命にかかわることもあるため、注意が必要です。
腎機能障害の症状としては、むくみ、尿量の減少・増加、体重減少・増加のほか、倦怠感、息切れ、わき腹の痛み、関節痛、発熱、発疹、下痢、吐き気、嘔吐などがあります。初期はこうした症状があらわれないことも多いため、排尿の回数や量、尿の色の変化などに注意してください。
特に注意が必要な副作用
筋炎、
横
紋
筋
融
解
症
アブラキサンとペムブロリズマブの併用療法では、しばしば筋肉痛があらわれることがありますが、ごくまれに筋炎や横紋筋融解症といった病気が起こることがあります。筋炎や横紋筋融解症になると、発熱や疲労、体重減少、手足に力が入らない、立ち上がりにくい、といった症状があらわれます。
特に注意が必要な副作用
膵炎
膵臓に炎症が起こると、腹痛や吐き気、背中の痛み、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)、発熱などの症状があらわれます。症状が進行すると、命にかかわることもあります。
特に注意が必要な副作用
1型糖尿病
膵臓からインスリンが分泌されなくなり、慢性的に血糖値が高くなることがあります。特に急激に血糖値が上昇した場合には命にかかわりますので、緊急の対応が必要です。
特徴的な症状としては、口の中やのどが渇きやすい、水分摂取量の増加、尿量がふだんより多くなる、トイレが近くなる、体重が減るといった症状があります。また、疲れやすくなったり、発熱、吐き気、腹痛、意識がうすれるといった症状があらわれることもあります。
特に注意が必要な副作用
心筋炎
心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こると、かぜのような症状(発熱、せき、疲れやすい、だるい、筋肉痛など)や消化器の症状(吐き気、下痢など)があらわれます。また、息切れや胸の痛み、むくみなどがあらわれることもあります。急性の場合は命にかかわることもありますので、担当の医師や看護師、薬剤師に相談してください。
特に注意が必要な副作用
神経障害(ギラン・バレー症候群など)
アブラキサンとペムブロリズマブの併用療法では、しばしば手足のしびれがあらわれますが、ごくまれに神経障害の一種である「ギラン・バレー症候群」が起こることがあります。
ギラン・バレー症候群では、両側の手足の力が入らなくなり、しびれ感が出た後、急速に全身に広がり進行します。物が二重に見えたり、食べ物がのみ込みにくくなるほか、呼吸が苦しくなることもあります。
特に注意が必要な副作用
ぶどう膜炎
目の中に炎症が起こり、かすみがかかったように見える、虫が飛んでいるように見える、まぶしく感じる、見えにくいといった症状があらわれることがあります。
また、目の症状のほかに、頭痛、耳鳴り、白斑(皮膚の一部の色素が抜けて白くなる)、白髪などの症状があらわれることもあります(フォークト・小柳・原田症候群)。
特に注意が必要な副作用
脳炎、髄膜炎
脳炎や髄膜炎が起こると、頭痛や発熱、吐き気、嘔吐のほか、意識がうすれる、けいれん、うなじがこわばり曲げられなくなる、といった症状があらわれます。
特に注意が必要な副作用
重症筋無力症
まれに筋力が低下する「重症筋無力症」という病気が起こることがあります。具体的には、まぶたが垂れ下がる、呼吸が苦しくなる、顔の筋肉が動かしにくくなる、ろれつが回らなくなる、手足や腰、肩などに力が入りにくくなるといった症状があらわれます。さらに、これらの症状が休むことで一時的に回復したり、朝のほうが夕方よりも症状が軽い、といった特徴があります。
特に注意が必要な副作用
結核
結核菌に感染し、結核を発症すると、せきや痰、微熱、倦怠感などの症状があらわれます。また、血痰(血が混じった痰)や体重減少などの症状があらわれることもあります。これらの症状がみられたら、担当の医師や看護師、薬剤師に相談してください。
特に注意が必要な副作用
重篤な血液障害、
血
球
貪
食
症候群
免疫の異常などが原因で、重篤な血液障害などがあらわれることがあります。
このような症状があらわれたら、すぐに、担当の医師や看護師、薬剤師に連絡しましょう。
- <免疫性血小板減少性
紫 斑 病が疑われる症状> - 皮膚にみられる点状や斑状の出血
- 鼻血(鼻かみによる粘膜の出血)
- 歯みがきなどによる口内の出血
- 月経過多
- 血尿
- など
- <溶血性貧血、
赤 芽 球 癆 が疑われる症状> - 手足が冷たい
- 疲労・倦怠感
- 顔色が悪く青白い
- 動悸・息切れ
- めまい・立ちくらみ
- 頭痛
- 白目や皮膚が黄色くなる(軽い黄疸)
- など
- <無顆粒球症が疑われる症状>
- 発熱
- 悪寒
- のどの痛み
- など
- <血球貪食症候群が疑われる症状>
- 発熱
- 貧血
- 出血
- 皮疹
- 肝脾腫 (肝臓・脾臓の腫れ)*
- リンパ節の腫れ
- など
- *進行すると、おなかのはりや、おなかを押さえたときに痛みを感じることなどがあります。
特に注意が必要な副作用
黄
斑
浮
腫
アブラキサンの副作用として、まれに視力の低下(目がかすむ)、ものがゆがんで見える、視野の中に見えない部分がある、といった症状があらわれることがあります。放置しておくと重症となり、元に戻りにくくなるので、早めに対処することが大切です。
ワンポイントアドバイス
- 黄斑浮腫による見え方の異常は、下の「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の線を見ることで、セルフチェックができます。
- もし下記のような見え方の異常がある場合は、早めに担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。
<見え方のイメージ>
<アムスラーチャート>
- 検査はメガネをつけたままで片目ずつ行います。
- 片方の目は手でおおいかくします。
- チェックする側の目は、約30cmはなしてまん中の点を見るようにします。