がんと治療法
●がんとは?
細胞の中にある遺伝子は、それぞれ決められた役割をもって働いています。その役割の1つが、細胞の増殖とその抑制です。正常な細胞は、体や周囲の状態に合わせて遺伝子が適切に働くことにより、増えたり、増えることをやめたりしています。
正常な細胞が分裂するときなどに、偶然、遺伝子に「傷」が生じることがあります。また、この傷は、喫煙、ウイルスや細菌などの感染、さまざまな化学物質、放射線などの外的要因によって生じることもあります。この傷のことを遺伝子の「変異」といいます。さまざまな原因で生じた遺伝子の変異によって、細胞が無秩序に増え続けるようになることがあり、このようにしてできた細胞のかたまりを「腫瘍」といいます。
悪性腫瘍は、細胞が無秩序に増えながら周囲にしみ込むように広がったり(浸潤 )、血管などを介して体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)する腫瘍です。放っておくと全身に広がり、体にさまざまな悪い影響をもたらすため、ほとんどの場合、治療が必要になります。悪性腫瘍のことを「がん」ともいいます1)。
1) 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス
(https://ganjoho.jp/2025年4月閲覧)
●がんの治療法
がんの種類や進行の程度、身体の状態などを検査でよく調べて、提案できる治療法の中から、あなたにとっての「最適な治療」を探ります。
| 手術(外科治療) | がんやがんのある臓器を取り除く(切除する)治療法です。 | |
|---|---|---|
| 放射線治療 | 手術と同様、局所に対する治療ですが、手術のように臓器を取り除いたりすることなくがんの部分に放射線をあてて治療します。 | |
| 薬物療法 | 細胞障害性抗がん薬 | 細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がんを攻撃する薬です。 |
| 分子標的薬 | がんの発生や増殖に関わるタンパク質などのさまざまな分子を標的とし、その機能を抑えることでがんを攻撃する薬です。 | |
| 内分泌療法薬(ホルモン療法薬) | ホルモンの分泌や働きを阻害することでがんを攻撃する薬です。ホルモンを利用して増殖するがんに対して使います。 | |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外して、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする薬です。 | |
| 緩和ケア | がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。緩和ケアは、がんに伴う心と体のつらさを和らげます。 | |
(https://ganjoho.jp/2025年4月閲覧)より作表
●がん遺伝子検査
肺がん、大腸がん、乳がんなど一部のがんでは、医師が必要と判断した場合に、がん遺伝子検査が行われます。1つまたは少数の遺伝子を調べて診断することや、検査結果をもとに薬を選ぶ治療が行われています。がん遺伝子検査は、「がんの診断」や「薬が効きそうか」「副作用が出やすいか」の判断などに役立ちます1)。
肺がん患者さんでお薬による治療(薬物療法)を選択する際にも、がん遺伝子検査を行います。遺伝子変異があるとわかった場合には、それぞれの遺伝子変異に応じた「分子標的薬(=分子標的治療薬、上表をご参照ください)」と呼ばれるお薬を選択します。
分子標的治療薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的として、がん細胞が増殖しにくい環境を整えるお薬です。

1) 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス
(https://ganjoho.jp/2025年4月閲覧)

