ニュースリリース

2009年03月24日
大鵬薬品工業株式会社

乳がん術後治療研究(N・SAS-BC01)の結果がJCO(米国癌治療学会誌)に掲載

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)で実施しておりました乳癌の術後治療研究(N・SAS-BC 01)の結果がこのたび、JCO(米国癌治療学会誌)(※3)に掲載されましたのでお知らせします。

N・SAS-BC 01試験は日本国内で実施されたUFT(※1)療法とCMF(※2)療法の無作為化比較試験で、リンパ節転移はないが再発の危険性が高いと考えられる乳癌の手術を行った患者さんを対象としています。 本試験は、UFT療法の術後化学療法としての有用性を、世界的な標準的多剤併用療法の一つであるCMF療法と比較検証することを目的に実施されました。6年以上の観察の結果、UFT療法はCMF療法と同様の無再発生存率ならびに全生存率を示しました。また、QOL(Quality of Life: 生活の質)を示すスコアはUFT療法が統計学的有意に良好である結果が得られました。

N・SAS-BC 01試験結果の概要

試験名 リンパ節転移はないが再発の危険性の高い乳癌症例を対象としたテガフール・ウラシル配合剤(UFT)療法とシクロホスファミド・メトトレキサート・フルオロウラシル(CMF)療法に関する術後無作為化比較試験:N・SAS-BC 01試験
背景 UFTは、乳癌術後療法を始め、日本の医療現場で最も繁用されていた薬剤であり、CMF療法は、1996年に日本で認可された、当時の世界的な標準的多剤併用療法である。両療法の進行癌に対する効果から乳癌の術後療法としても同等の効果が期待されること、また、この二つの治療法については、乳癌の専門家の間でもどちらがいいか、意見が分かれていた。以上から、本試験はUFTの乳癌術後化学療法としての効果が、CMF療法と比較して劣らない事を検証するために実施された。
方法 1996年10月~2001年4月の間に、リンパ節転移はないが再発の危険性の高い乳癌症例が、日本国内の47施設から733例登録され、UFT療法(2年間投与)またはCMF療法(6コース投与)に割り付けられた。また、ホルモンレセプター陽性乳癌に対しては、タモキシフェンが5年間投与された。主要評価項目は無再発生存率とした。
結果 5年無再発生存率はUFT群で87.8%、CMF療法群で88.0%(ハザード比0.98[95% CI, 0.66-1.45]、p=0.92)、5年生存率はUFT群で96.2%、CMF療法群で96.0%(ハザード比0.81[95% CI, 0.44-1.48]、p=0.49)であった。また、UFT療法とCMF療法では毒性のプロファイルに違いが認められた。UFT療法のQuality of Life(QOL)に関するスコアはCMF療法よりも良好であった。
結論 UFT療法の無再発生存率と全生存率はCMF療法と同様の結果が得られた。またQOLスコアはCMF療法よりもUFT療法が良好であったことから、UFT療法は、リンパ節転移はないが再発の危険性が高いと考えられる乳癌に対して、QOLを維持する有望な術後化学療法の選択肢となると考えられた。

用語解説

(※1) UFT ユーエフティは、5-FUのプロドラッグであるテガフール(FT)にウラシル(U)を配合することにより、5-FUの効果を高めることを目的として開発された経口抗悪性腫瘍剤である。現在、日本国内では頭頸部癌、胃癌、結腸・直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、前立腺癌ならびに子宮頸癌の適応症で使用されている。

(※2) CMF シクロホスファミド(CPA)、メトトレキサート(MTX)、フルオロウラシル(5-FU)の3剤を併用する、乳癌に対する多剤併用療法である。術後化学療法としての有用性が1976年にN Engl J Medに報告されているが、日本では1996年に認可された。世界的な標準的多剤併用療法の一つである。

(※3) JCO(Journal of Clinical Oncology:米国癌治療学会誌) American Society of Clinical Oncology(米国癌治療学会:ASCO)の学会誌で、2007年のImpact factorは15.484。癌研究領域における主要な医学雑誌の一つである。

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