ニュースリリース

2011年06月08日
大鵬薬品工業株式会社

進行膵癌を対象としたTS-1臨床試験(GEST) 結果を米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)は、米国時間の6月7日、第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、進行膵癌症例を対象としたTS-1臨床試験(GEST*1)の結果が口頭発表されましたのでお知らせします。(抄録番号4007)

*1 GEST:Gemcitabine and TS-1 Trial

膵がんの標準治療薬であるゲムシタビンに対して、経口抗がん剤であるTS-1が非劣性であることが検証され、TS-1とゲムシタビンの併用療法は優越性を検証できませんでした。

試験結果

主要評価項目である全生存期間は、ゲムシタビン単剤が8.8ヵ月、TS-1単剤が9.7ヵ月であり、同等であることが示されました(HR=0.957,p=0.0003)。TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では10.1ヵ月であり、ゲムシタビン単剤よりも優れていることは統計学的に証明されませんでした(HR=0.875,p=0.1496)。
無増悪生存期間は、ゲムシタビン単剤が4.1ヵ月、TS-1単剤が3.8ヵ月であり、同等であることが示されました(HR=1.094,p=0.0237)。TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では5.7ヵ月であり、ゲムシタビン単剤よりも統計学的に優れていることが証明されました(HR=0.660,p<0.0001)。
奏効率では、ゲムシタビン単剤が13%に対してTS-1単剤が21%(p=0.0242)であり、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法が29%(p<0.0001)であり、いずれの治療法もゲムシタビン単剤よりも統計学的に優れていることが証明されました。
安全性についてはいずれの群も認容可能なものでした。ゲムシタビン単剤、TS-1単剤、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法において特徴的なものは、グレード3以上の血液毒性として白血球減少は19%、4%、38%、好中球数減少は41%、9%、62%、血小板減少は11%、2%、17%でした。グレード3以上の非血液毒性として下痢は1%、6%、5%でした。
QOLについては、EQ-5D*2により評価した結果、ゲムシタビン単剤に対してTS-1単剤は差がなく(p=0.61)、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では統計学的に優れていることが証明されました(p=0.003)。

*2 EQ-5D:Euro-QOL 5D 健康水準の変化を基数的に評価するためのQOL質問票

本試験結果において、ASCO発表演者である大阪成人病センター 井岡 達也先生は「膵がん治療の標準療法であるゲムシタビン単独に対して、TS-1が非劣性を示したことは大きな意義がある。経口剤による標準治療を受けることが可能になる」とコメントをされています。 大鵬薬品は、今回のGEST試験の結果は膵がん治療に大きく貢献するものであったと考えております。 さらなる検討を進め、膵がん領域における治療法の開発を進めてまいります。

ティーエスワンについて

フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤であるティーエスワンは、吸収後、抗がん剤フルオロウラシル(5-FU)に変換される代謝拮抗物質のテガフール、体内で5-FUの分解を阻害するギメラシル(5-chloro-2,4-dihydroxypyridine,またはCDHP)、消化管で5-FUのリン酸化を阻害するオテラシルカリウム(Oxo)3化合物の配合剤です。胃がんの治療薬として開発され、1999年に国内で最初に承認されて以来、胃がんの標準治療薬となっています。日本においては、他に結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌および胆道癌の6つの追加効能を取得しています。海外では、韓国、シンガポール、中国、台湾と欧州で胃癌の適応で承認されており、今日まで、ティーエスワンは日本とアジアで870,000人以上の患者さんに使用されています。

GEST試験について

本試験は日本と台湾の共同試験であり、80以上の医療機関が参加し行われました。2007.7~2009.10月の間に834例が登録されました。対象は切除不能進行再発膵癌の患者さんで、ゲムシタビン単独で治療する群と、経口抗がん剤であるTS-1単独で治療する群、TS-1とゲムシタビンを併用して治療する群の3つの群に割り付けて比較したものです。評価項目は全生存期間、無増悪生存期間および安全性等としております。ゲムシタビン単独で治療する群は、1,000mg/m2のゲムシタビンを1日目、8日目および15日目に点滴静注し、22日目は休薬する28日を1コースとしたスケジュールでした。TS-1単独で治療する群は体表面積に合わせて規定された投与量(80mg、100mg、120mg/日)を1日2回、28日間連続経口投与し、その後14日間休薬する42日を1コースとしたスケジュールでした。また、TS-1とゲムシタビンを併用する治療群は1,000mg/m2のゲムシタビンを1日目と8日目に点滴静注し、TS-1は体表面積に合わせて規定された投与量(60mg、80mg、100mg/日)を1日2回、14日間連続経口投与し、その後7日間休薬する21日を1コースとしたスケジュールでした。いずれの治療群も規定された中止の基準に該当するまで治療薬投与が繰り返されました。

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