1969年、初代社長の小林幸雄は、当時急激に需要が増え始めた生薬製剤「パントクリン」の商談で旧ソ連を訪れました。商談の傍ら、寸暇を惜しんで製薬関連の視察を行った小林は、モスクワのがん研究所である注射剤のアンプルを目にします。それは、抗がん剤の新薬5-フルオロウラシル(5-FU)の誘導体※「フトラフール」でした。小林は直感で大きな可能性を感じ、その場で日本国内での臨床試験実施を決意しました。帰国後すぐに研究所内に「制がん班」を設け研究を開始。基礎研究において効果を確認した後、臨床試験へと移りました。しかし、最初の臨床成績報告会では携わった研究者たちから効果に対する否定的な報告が相次ぐなど満足のいく研究結果が得られませんでした。ただ、ある患者に対する有効例の発表があり、その有効例にいちるの望みを託し研究を継続。その結果、低濃度でも長時間がん細胞と接触することで抗がん作用を発揮することが解明され、当時世界的に汎用されていなかった経口抗がん剤の開発へと大きく舵を切りました。その時、1972年4月、直感から切り拓いた可能性は現実へと確実に動き出しました。
※誘導体:ある化合物の分子の一部が変化してできた化合物。
1974年経口抗がん剤「フトラフール」が誕生しました。従来の抗がん剤とは異なり“経口で長期投与ができる”という特徴から外来治療を可能とし、後に“術後補助化学療法”の概念を定着させました。
「フトラフールカプセル200mg」と「フトラフール注400mg」発売
それから10年後、1984年に、「フトラフール」に“ウラシル”を配合した「ユーエフティ」を発売。この「ユーエフティ」から、さらに研究が進められ、「フトラフール」を主薬に、“ギメラシル”と“オテラシルカリウム”という新規化合物を配合した「ティーエスワン」を、1999年に発売しました。
「ユーエフティ配合カプセルT100」発売
「ティーエスワン配合カプセルT20・T25」発売
「ユーゼル錠25mg」発売
「ティーエスワン配合顆粒T20・T25」発売
2013年には、「ティーエスワン」で抗がん剤として世界初となるOD錠を発売しました。近年では、より一層患者さんのQOLを意識した、がんのトータルケアを目指した研究開発も行っています。がん患者さんが服用しやすい剤形を開発するとともに、がん治療にとどまらず、患者さんのQOLの向上にも貢献できるよう努めています。
「アロキシ静注0.75mg」発売
「アブラキサン点滴静注用100mg」発売
「ティーエスワン配合OD錠T20・T25」発売
「ヨンデリス点滴静注用0.25mg・1mg」発売
「ロンサーフ」は、 “トリフルリジン”および “チピラシル”の2種類の化合物の配合剤で、大鵬薬品が創薬した薬剤です。2014年に世界に先駆けて国内で発売し、翌年には、米国においても販売を開始しました。本剤は、大鵬が米国で初めて承認を取得した製品です。欧州においても2016年に欧州委員会(EC)より承認を取得し、現在はアジア諸国を含めた80カ国以上で承認されています。大鵬薬品は、半世紀にわたる抗がん剤開発の歴史の中で、がん化学療法に関する多くのエビデンスを確立してきました。その豊富な経験を力に変え、これからも日本をはじめ世界のがん患者さんに貢献できる新薬を開発してまいります。
「ロンサーフ配合錠T15・T20」発売