オープン
イノベーション

大鵬薬品は外部からの技術、開発シーズの獲得にも動いています。2つのCVC (コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて独創的な研究や革新性のある開発技術に携わるベンチャー企業およびスタートアップへの積極的な投資と支援を行っています。一方、高度な専門知見を有するアカデミア(大学・研究機関)との連携による共同研究開発を推進し、自社創薬力を高め、パイプライン創製を加速させています。

CVC[Corporate Venture Capital]とは : 事業会社が自己資金でファンドを組成し、新興の未上場企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動組織のこと。一般的なベンチャー・キャピタルとは異なり、自社の事業内容と関連性のある企業に投資し、本業との相乗効果を得ることを目的として運営される。

CVCを介した連携
ベンチャーやスタートアップ企業に出資、インキュベーションと事業成長を支援

2016年にTaiho Ventures, LLC(米国、以下「大鵬ベンチャーズ」)を設立し、主にオンコロジー領域で革新的な技術や知見を持つ国内外の有望なバイオベンチャーへの投資を行ってきました。大鵬薬品のCVCは資金面での支援のみならず、研究開発や経営などの経験を生かし、最先端の技術や治療法を社会に届けることに注力しています。大鵬ベンチャーズの具体的成果として、Arcus Biosciences社やCullinan Pearl社への投資を通じて、大鵬薬品の開発パイプライン拡充に貢献しています。大鵬薬品は2017年に Arcus社とオプション契約を締結後、3剤の導入を実施。また2022年にはCullinan Pearl社買収を通じて同社にスピンアウトしFDAから画期的治療薬指定を受けた臨床化合物の再取得に成功しています。競争の激しい創薬においてグローバルで最先端の外部情報を入手することは自社の研究開発にも大きく寄与するため、CVCを通じて潜在するさまざまな情報をキャッチし、技術提携のチャンスを創出できる点は、大きなアドバンテージです。大鵬薬品がこれまで経口抗がん剤のパイオニアとして培ってきたノウハウを深化させ、創薬基盤技術の進化を加速させる力になります。
2019年には大鵬イノベーションズ合同会社(日本)を設立しました。がん関連を中心とした国内外のバイオベンチャーを投資対象とする大鵬ベンチャーズに対して、大鵬イノベーションズは国内の医療関連、コンシューマーヘルスケア関連など、創業検討段階を含む有望なスタートアップへの出資を行っており、インキュベーションや事業成長を支援します。加えて、大鵬薬品が有する研究アセットを活用した外部研究機関とのアウトバウンド型オープンイノベーションにも取り組んでいます。
こうした双方向のオープンイノベーションの取り組みを積極的に推進しています。

インキュベーションとは : 起業家の育成、新しいビジネスを支援する施設
アウトバウンド型オープンイノベーションとは:企業が有する研究シーズ(開発化合物や化合物ライブラリー)について、その企業が注力する疾患以外で応用することを目的として、大学などの外部研究機関と共同で研究開発を行うオープンイノベーション型の提携スキーム

米国カルフォルニアに本社を置くCVCで、がん治療薬候補を持つ企業を中心に国内外のバイオベンチャーに投資を行っている。
https://www.taihoventures.com/

国内の医療関連領域、コンシューマーヘルスケア領域、異業種との連携による新たなヘルスケア領域をターゲットとするCVC。起業準備の段階を含む早期ステージからの共創を目的に投資を行う。
https://www.taihoinnovations.com/

自社創薬のパイプラインを補完する
新たな技術の獲得を目指して

現在、大鵬薬品には幅広いパイプラインが揃っており、開発における自社創薬率は約80%を占め、自社創薬が私たちのものづくりの基軸であることは揺るぎません。一方でオンコロジー領域における新薬上市の成功確率に目を向けると、さらなる進化が求められています。自社の創薬研究は一定規模のリソースを維持して展開しており、パイプラインを増やし続ける無尽蔵な体制ではありません。自社単独で創薬に必要な技術や情報をゼロからすべて賄うことは必ずしも競争力の優位性にはつながらず、補完する施策も必要です。そこで私たちは患者さんに価値ある薬剤を届ける可能性を高めるため、前述のようにCVCと連携しています。
革新的な新薬の研究開発を手がける国内外のベンチャー企業やスタートアップへの投資・支援をCVCが行い、新しい技術の獲得を大鵬薬品が図っていく。検証段階の創薬コンセプトや、基礎技術の情報を研究本部でキャッチアップするのは容易ではありません。CVCと連携することで創薬初期の情報をCVCから提供してもらい、次世代の創薬にとって有益な技術、情報を選別して獲得につなげていくことを研究部門が行っています。現在、前述した二つのCVCを介して独自のネットワークを構築しており、自社創薬にはないユニークな技術、創薬シーズ、開発コンセプトへのアクセスが可能になっています。
創薬を取り巻く国内外の環境が激しく変化し、多様化する中で、ものづくりの新たな視点や着想の獲得は価値ある資産であり、自社創薬とのシナジーによって次世代に向けた研究開発の可能性を広げていきたいと考えています。

アカデミアとの連携
難治性がんを狙った創薬の共同開発と、臨床ニーズに即した研究強化

現在、がん領域の新しい治療方法や抗がん剤の開発が進み、がんに罹患した患者さんの生存期間が延びています。一方、厳しい経過をたどることの多い治療満足度の低い難治性がんに対しては効果が期待できる薬剤がほとんどないのが現状です。大鵬薬品は、2020年に米国のUniversity of Texas MD Anderson Cancer Centerと提携して難治性がんを狙った包括的な創薬の共同研究を進めています。本共同研究を通じて大鵬薬品では独自の創薬基盤技術を組み合わせることにより難治性がんに有用な治療薬の創製を一層強化できると考えています。特に脳腫瘍、脳転移に対する薬剤創製においては、自社の脳移行性化合物を見出す創薬基盤と高い専門性を有する社外研究力により取り組んでいます。
アカデミアとの連携は、高度で専門的な知見を共有でき、創薬技術を高める一助となることはもちろんですが、臨床ニーズを捉えた創薬を考える切り口や人財育成の観点においてもメリットがあります。今後も外部アカデミアとの協業体制を整備し、連携強化を図っていきます。

このように私たちは長年の研究で培った創薬基盤技術を活用することで一貫して患者さんのかけがえのない「いつもを、いつまでも。」を実現する創薬に取り組んでいます。複数の創薬基盤技術を組み合わせることが独自性のある大鵬薬品の創薬力につながり,研究者全員の垣根を越えた対話から生まれるイノベーティブな発想によって創薬力を最大化させていきます。