非小細胞肺癌

扁平上皮非小細胞肺癌の臨床試験 「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は最新の電子添文をご参照ください。

国際共同第Ⅲ相試験:KEYNOTE-407試験1)

Pembrolizumab plus Chemotherapy for Squamous Non-Small-Cell Lung Cancer(KEYNOTE-407試験)

  • 1) Paz-Ares, L. et al.: N. Engl. J. Med., 2018, 379(21), 2040-2051(ぺムブロリズマブの切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する効能又は効果追加時評価資料)

大鵬薬品工業株式会社よりSugawara Sは謝金を、Kato Tは謝金及び研究費を受け取りました。

試験概要

未治療でステージⅣの扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象に、アブラキサン又は他のパクリタキセル製剤/カルボプラチン/ぺムブロリズマブ併用とアブラキサン又は他のパクリタキセル製剤/カルボプラチン/プラセボ併用の有効性と安全性を比較しました。

投与方法

ぺムブロリズマブ200mgを点滴静注するグループ、又はプラセボを点滴静注するグループのいずれかに無作為に割り付け、3週を1コースとして最大35コースまで投与しました。
なお、1~4コース目は両群ともアブラキサン100mg/m2を30分かけて毎週、又は他のパクリタキセル製剤200mg/m2※1を3時間かけて3週ごとに点滴静注し、カルボプラチンAUC 6※2を各コースの1日目に点滴静注しました。

  • ※1 パクリタキセルの国内で承認されている非小細胞肺癌の用法・用量は「通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回210mg/m2(体表面積)を3時間かけて点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。」である。
  • ※2 カルボプラチンの国内で承認されている非小細胞肺癌の用法・用量は「通常、成人にはカルボプラチンとして、1日1回300~400mg/m2(体表面積)を投与し、少なくとも4週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、投与量は、年齢、疾患、症状により適宜増減する。」である。

試験デザイン 多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験

多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験

  • ※3 割付調整因子:PD-L1発現状況(1%以上、1%未満)、タキサン系薬剤(アブラキサン、他のパクリタキセル製剤)、登録地域(東アジア、世界の他の地域)
  • ※4 アブラキサン又は他のパクリタキセル製剤/カルボプラチンの併用は1~4コース目まで、ぺムブロリズマブ又はプラセボは最大35コースまで投与

評価項目

  • 主要評価項目:全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)
  • 副次評価項目:全奏効率(ORR:盲検下での画像評価)、奏効例の効果持続期間、安全性

評価基準

  • 奏効率:RECIST v1.1に従う
  • 安全性:CTCAE v4.03に従う

解析方法

有効性の評価対象はITT集団としました。OS、PFS及び奏効例の効果持続期間はKaplan-Meier法を用いて推定し、OS及びPFSでは両群間の比較に割付調整因子を層とした層別log-rank検定を用いて検定し、群間差の大きさは割付調整因子を層とした層別Cox比例ハザードモデル及びEfron法を用いて評価しました。奏効率について、群間差をMiettinen and Nurminenの層別法を用いて評価しました。試験全体のαエラーを片側2.5%に保つために、OS、PFS、ORRでそれぞれ片側0.005、片側0.015、片側0.005を割り当てました。また、本試験は2回の中間解析と最終解析を計画し、O’Brien‒Fleming型のα消費関数を用いたLan‒DeMets法で多重性を調整しました。第2回中間解析のαエラーはOSで片側0.0029、PFSで片側0.008が用いられました。
OS、PFS、奏効率について、事前に計画した項目(年齢、性別、ECOG PS、登録地域、PD-L1発現状況、タキサン系薬剤)でサブグループ解析を実施し、Cox比例ハザードモデルを用いてHRと95%信頼区間を算出しました。

患者背景

症例の内訳

ペムブロリズマブ群 プラセボ群
登録例数 278 281
有効性評価対象例数*1 278 281
安全性評価対象例数*2 278 280
  • *1 ITT集団
  • *2 as-treated population

治療の実施状況

ペムブロリズマブ群 プラセボ群
治療期間
平均値±標準偏差(月)
6.3±4.1 4.7±3.5

患者特性

症例数(%)

背景因子 ペムブロリズマブ群
(n=278)
プラセボ群
(n=281)
年齢(歳) 中央値[範囲] 65[29‒87] 65[36‒88]
<65歳 127(45.7) 127(45.2)
性別 男性 220(79.1) 235(83.6)
登録地域 東アジア 54(19.4) 52(18.5)
その他 224(80.6) 229(81.5)
ECOG PS 0 73(26.3) 90(32.0)
1 205(73.7) 191(68.0)
喫煙状況 現在喫煙中又は喫煙歴あり(禁煙) 256(92.1) 262(93.2)
喫煙歴なし 22( 7.9) 19( 6.8)
組織型 扁平上皮癌 272(97.8) 274(97.5)
腺扁平上皮癌 6( 2.2) 7( 2.5)
脳転移 あり 20( 7.2) 24( 8.5)
腫瘍のPD-L1発現割合§ <1% 95(34.2) 99(35.2)
≧1% 176(63.3) 177(63.0)
 1‒49% 103(37.1) 104(37.0)
 ≧50% 73(26.3) 73(26.0)
評価不能 7( 2.5) 5( 1.8)
非転移性疾患に対する前治療歴 胸部放射線治療 17( 6.1) 22( 7.8)
術前/術後補助療法 5( 1.8) 8( 2.8)
  • ‡ 混合型の組織型の患者でも、検体中に扁平上皮癌が含まれていれば登録可とした。
  • § PD-L1の発現割合は、membranous PD-L1を発現している腫瘍細胞の割合と定義した。
  • ¶ 検体中の腫瘍細胞数が不十分又は検体中に腫瘍細胞がないため、PD-L1の発現が評価不能な場合。層別の際は、PD-L1の発現が評価不能であった患者を腫瘍のPD-L1発現割合<1%のサブグループに組み入れた。これらの患者は、PD-L1発現割合ごとの有効性解析からは除外した。

N Engl J Med. 2018 Nov 22;379(21):2040-2051
Copyright © 2018 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.

有効性

全生存期間:主要評価項目

全生存期間(OS)中央値は、ぺムブロリズマブ群15.9ヵ月[95%信頼区間:13.2-未達]、プラセボ群11.3ヵ月[95%信頼区間:9.5-14.8]であり、HRは0.64[95%信頼区間:0.49-0.85](p<0.001、層別log-rank検定[片側有意水準α=0.0029])でした。

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

全生存期間のサブグループ解析

全生存期間のサブグループ解析

無増悪生存期間:主要評価項目

無増悪生存期間(PFS)中央値は、ぺムブロリズマブ群6.4ヵ月[95%信頼区間:6.2-8.3]、プラセボ群4.8ヵ月[95%信頼区間:4.3-5.7]であり、HRは0.56[95%信頼区間:0.45-0.70](p<0.001、層別log-rank検定[片側有意水準α=0.008])でした。

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線)

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線)

無増悪生存期間のサブグループ解析

無増悪生存期間のサブグループ解析

安全性

有害事象の発現率は、ぺムブロリズマブ群98.2%(273/278例)、プラセボ群97.9%(274/280例)であり、主な有害事象はぺムブロリズマブ群で貧血(53.2%)、脱毛症(46.0%)、好中球減少症(37.8%)、プラセボ群で貧血(51.8%)、脱毛症(36.4%)、好中球減少症(32.9%)でした。

主な有害事象発現状況一覧

症例数(%)

ぺムブロリズマブ群 プラセボ群
全体 Grade 3-5 全体 Grade 3-5
安全性評価対象例数 278 280
有害事象発現例数(%) 273(98.2) 194(69.8) 274(97.9) 191(68.2)
投与中止に至った有害事象 37(13.3) 34(12.2) 18( 6.4) 18( 6.4)
一部投与中止に至った有害事象 65(23.4) 54(19.4) 33(11.8) 29(10.4)
 ぺムブロリズマブ又はプラセボ 48(17.3) 44(15.8) 22( 7.9) 21( 7.5)
 カルボプラチン 31(11.2) 28(10.1) 21( 7.5) 19( 6.8)
 nab-パクリタキセル又は他のパクリタキセル製剤 44(15.8) 33(11.9) 28(10.0) 24( 8.6)
死亡 23( 8.3) 23( 8.3) 18( 6.4) 18( 6.4)
治験薬による死亡(治験医師判断) 10( 3.6) 10( 3.6) 6( 2.1) 6( 2.1)
いずれかの群で発現率15%以上の有害事象
 貧血 148(53.2) 43(15.5) 145(51.8) 57(20.4)
 脱毛症 128(46.0) 1( 0.4) 102(36.4) 3( 1.1)
 好中球減少症 105(37.8) 63(22.7) 92(32.9) 69(24.6)
 悪心 99(35.6) 3( 1.1) 90(32.1) 4( 1.4)
 血小板減少症 85(30.6) 19( 6.8) 65(23.2) 18( 6.4)
 下痢 83(29.9) 11( 4.0) 65(23.2) 6( 2.1)
 食欲減退 68(24.5) 6( 2.2) 82(29.3) 5( 1.8)
 便秘 64(23.0) 2( 0.7) 61(21.8) 3( 1.1)
 疲労 63(22.7) 9( 3.2) 72(25.7) 11( 3.9)
 無力症 60(21.6) 6( 2.2) 59(21.1) 10( 3.6)
 関節痛 57(20.5) 4( 1.4) 40(14.3) 2( 0.7)
 末梢性ニューロパチー 57(20.5) 3( 1.1) 45(16.1) 2( 0.7)
 嘔吐 45(16.2) 1( 0.4) 33(11.8) 6( 2.1)
 咳嗽 37(13.3) 2( 0.7) 47(16.8) 3( 1.1)
 呼吸困難 36(12.9) 4( 1.4) 45(16.1) 3( 1.1)
  • * CTCAE v4.03に基づく評価

N Engl J Med. 2018 Nov 22;379(21):2040-2051
Copyright © 2018 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.

Grade 3以上の有害事象はぺムブロリズマブ群194例(69.8%)、プラセボ群191例(68.2%)に認められ、主なGrade 3以上の有害事象はぺムブロリズマブ群で好中球減少症(22.7%)、貧血(15.5%)、血小板減少症(6.8%)、プラセボ群で好中球減少症(24.6%)、貧血(20.4%)、血小板減少症(6.4%)でした。投与中止に至った有害事象はぺムブロリズマブ群37例(13.3%)、プラセボ群18例(6.4%)、死亡例はそれぞれ23例(8.3%)、18例(6.4%)に認められました。ぺムブロリズマブ群の死亡例の内訳は、呼吸不全及び敗血症 各3例、心停止及び肺出血 各2例、心不全、循環虚脱、肝不全、腸管穿孔、肺膿瘍、壊死性筋膜炎、肺炎、間質性肺炎及び肺敗血症 各1例、不明4例であり、プラセボ群の死亡例の内訳は、敗血症性ショック3例、心肺停止2例、急性腎障害、心停止、血胸、多臓器不全症候群、胸水、肺炎、間質性肺炎、肺出血、肺真菌症及び敗血症 各1例、不明3例でした。

  • ※ 投与中止に至った有害事象の事象名は論文中に記載なし。DIの安全性情報を参照のこと。
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