一人一人の患者さんに合った治療を医療関係者が選択できるよう、適切な情報提供を行うことが私たち医薬本部の使命です。
高垣勝哉(医薬本部 学術統括部 イベント管理課)× 五嶋元子(医薬本部 名古屋支店 医薬一課)
患者さんにより良い医療が提供されるよう、薬剤の適切な情報を医療関係者に届ける。
――お二人が所属する医薬本部とはどのような部署なのでしょうか。
高垣 患者さんにより良い医療が提供されるように、薬剤を適正に使用いただくための情報を医療関係者にお届けするのが医薬本部に所属する私たちの役割です。
五嶋 新薬が世に出るまでには、基礎研究、臨床試験、さらに承認申請といったさまざまな段階を経ることになるのですが、私たちが携わるのは、薬剤の承認以降です。
――五嶋さんはMR(医薬情報担当者)として具体的にどのような仕事をされているのでしょうか。
五嶋 MRは、製薬会社の営業職です。担当の医療機関を訪問し、医師、薬剤師、看護師などに自社製品の有効性、安全性、適切な使用方法などの情報を提供したり、副作用に関する情報を収集したりすることが主な仕事です。
大鵬薬品には全国に15の医薬営業支店があるのですが、私は現在、名古屋支店に在籍し、愛知県内の大学病院や公立病院などを担当しています。日々、担当施設の医療関係者とコンタクトを取り、訪問しています。ただ、コロナ禍の昨今はオンラインで面談をすることも増えました。
――高垣さんも以前は支店に在籍されていたそうですね。
高垣 はい。私は学術課に所属していた時に福岡支店と仙台支店に駐在した経験があります。
学術課は、医学的・科学的な見地から、医師をはじめとした医療関係者と治療方針などについて情報交換を行う部署です。疾患から各薬剤まで幅広い専門知識をもって、より高度な情報提供を行うとともに、解決すべき新たな治療課題を収集することに重きを置いています。このサイクルを構築することによって、治療内容が目まぐるしく更新される昨今においても、常に最新かつ最良の情報提供が実現できていると感じます。
五嶋 実際、私たちが医療関係者とお話ししていると、MRでは対応が難しい高度な専門知識を求められることがあります。医薬品や医療に関することだからこそ、曖昧な回答はできません。きちんとお答えするために、学術課に相談し、医療関係者の質問や相談の解決につながる資料を用意してもらったり、場合によっては医療関係者に直接説明してもらったりしています。
高垣 私も支店駐在時には、医療関係者との面談に同席する機会が多くありました。私たちが面談を行う医師の中には、各疾患領域の権威、いわゆるオピニオンリーダーとして研究活動や地域医療を牽引されるような方々もいらっしゃいます。特にそのような先生方との情報交換には極めて高度な専門性が要求されるため、学術課とMRで連携して対応を行います。MRと学術課員が密に連携し、より良い治療法を模索するために医療関係者と議論できることは、大鵬薬品の強みであると感じています。
患者さんと医療関係者が薬剤の効果を実感してくれた!
――MRが医療関係者から受ける相談には、例えばどのような内容があるのでしょうか。
五嶋 薬剤の使い方、投与期間や投与方法といった比較的答えやすい内容もあれば、「ある患者さんにこういう副作用が出ているのだけど・・・」と、適切な対処法やその他の選択肢に関する情報を求められることもあります。
高垣 やはり多いのは、自社製品に関連する問い合わせでしょうか。医療関係者は日々患者さんと接する中でさまざまな疑問が出てきます。例えば、薬剤の副作用に対してどのような対策手段があるのか、個々の患者さんの治療内容に迷った際にどう選択すべきかなど、多様なケースがあります。そのような時にMRに情報を求められることがあります。五嶋さんも医療関係者から相談されることがあると思いますが、意識していることはありますか?
五嶋 おこがましいかもしれませんが、医療関係者と二人三脚でその患者さんと向き合っているのだと意識しています。
高垣 そのような気持ちを持つことは大切ですよね!
医療関係者と二人三脚で患者さんのことを考えることができるのがMRの醍醐味です。(五嶋)
五嶋 以前、ある患者さんに対して治療薬の選択肢はたくさんあるものの、決め手がなくて医師がどれにするか悩んで相談してくださったことがありました。そのような時は自社製品か、他社製品かは関係なく、その患者さんに合っている治療法を真剣に考え、医師とディスカッションします。
その上で医師が薬を選択するわけですが、後日、「先日の患者さんは、あの薬剤がすごく効いたよ。患者さんもとても喜んでいる」という話を聞くと、本当によかったなと思うし、医師に伴走できたと感慨深いです。
ある別の医師からは「この前の患者さん、あの薬剤を使用してから調子が良くなっているよ」とやや興奮気味にお電話を頂いたこともあります。すぐに電話は切れてしまいましたが、それだけ忙しい合間を縫って、わざわざ連絡してくださったことがすごくうれしかったです。
高垣 私たちは患者さんと直接情報交換ができないだけに、医師からそのような言葉をいただけるのはうれしいですよね。
製薬会社が医療関係者に製品情報を提供する際、その入り口は大きな単位の話になることが多いです。例えば、「1000人の臨床試験で、何%に有効性が認められました。何%に副作用が発現しました」といった届けかたです。しかし、医療関係者は一人一人の患者さんに日々向き合っています。どんなに副作用の発現率が低い薬剤であっても、その患者さんに副作用が発現してしまえば大きな問題となります。このように、一人一人の患者さんにより良い治療を提供しようと戦っている医療関係者を、少しでも支えられる存在でありたいと思います。
各疾患領域における製品関連情報をタイムリーに発信
――高垣さんは現在、本社内の学術統括部イベント管理課に所属されていますが、こちらではどのような業務に携わっているのでしょうか。
高垣 学術統括部は全国を7エリアに分け、各拠点に駐在するエリア学術課と本社のイベント管理課とで構成されています。部全体としては、各エリアあるいは全国の取り組みを学術的観点から企画・支援すること、オピニオンリーダーとの情報交換を行うことが主業務です。その中でイベント管理課は、全国の医療関係者向けのオンラインセミナーや学会共催セミナーなどを介した情報発信の企画・運営の業務、同じ医薬本部の本社関連部門あるいは全国のエリア学術課と連携し、結節点として全社的な販売企画や結果検証を行う業務があります。昨今は、コロナ禍による病院の訪問規制などでMRの情報提供のあり方が激変する中、MRの活動とデジタルチャネルを組み合わせてどのように医療関係者へ情報を届けるべきか、膨大な活動記録データをもとに傾向分析や対策検討を行ってきました。
五嶋 イベント管理課は多種多様な業務を手がけていますよね。発売後は、治験*時よりも多様な患者さんに薬剤が処方されるため、開発段階では予測できなかった事例が出てきます。そうした情報を会社として蓄積し、医療関係者にフィードバックしたり、薬剤の改良や新薬開発に生かしたりすることは「育薬」といって非常に大事なことです。それだけに、発売後の製品に関するタイムリーな情報や副作用のマネジメントについて、高垣さんたちイベント管理課が開催するオンラインセミナーなどで医療関係者に定期的に発信していくことは非常に意義のあることだと思います。
* ひとつのくすりが誕生するには、長い研究開発期間を必要とします。その間、培養細胞や動物でさまざまなテストを繰り返し、有効性の確認と安全性の評価を行います。そして、最後の段階でヒトを対象に行う試験が「治験」です。ヒトに使ってみて本当に安全で有効なのか、あるいはどれくらいの量を使用するのが適切なのかを調べる、くすりの候補にとっての「必須課程」です。(https://www.jpma.or.jp/about_medicine/shinyaku/tiken/base/chiken/index.html)
高垣 発売後の実臨床における副作用などの生の声は、現場でしか拾い上げることができません。このようなことから五嶋さんたちMRからのフィードバックが私たちにとっては重要です。やはりMRと学術課が連携することでこうした良いサイクルを循環できると改めて実感しています。
五嶋 お互いに必要な存在ということですね! MRとして今まで以上にイベント管理課と協力していけるよう頑張ります。
一人一人の患者さんに合った薬剤の提供をし続ける
――では、大鵬薬品のコミュニケーション・スローガン「いつもを、いつまでも。」について伺います。お二方はどうとらえていますか?
五嶋 とても短いですが、いろいろな想いが詰まっているスローガンですよね。このスローガンのように、私自身もいつも通りの生活を、患者さんやそのご家族へいつまでも届けたいと素直に思います。病気などで失われた、もしくは少し変わってしまった患者さんの日常が、いつもの日常に近づけるよう可能な限り支えたい、それが私たちの使命だと思います。
患者さんは医師という窓を通して治療を選び、向き合うことになります。その窓の裏から呼びかけ続け、その人に合った治療につながる一助になりたい。(高垣)
高垣 「いつもを、いつまでも。」の大事なところは、「“いつも”のありがたさにどれだけ気づくことができるか」のように個人的には感じます。
私の母は生前、がんの治療を受けていました。がんが見つかってから、いろいろな「いつも」が「いつも」ではなくなってしまいました。常にがんを意識し、できないことが次第に増え、気持ちも生活も大きく変わりました。この経験を通じ、「いつも」を失ってからその大切さに気づくのでは遅いと考えるようになりました。今あることがいかに尊く大事なものであるかを認識して、日々の生活を送りたいと改めて思わせてくれるスローガンです。
同時に、大鵬薬品の社員として、「この薬剤を選んでよかった」という声をいただけることは、医療に貢献できているという自負につながります。誰かの「いつも」を少しでも守ることができるよう努めたいという切なる想いが「いつもを、いつまでも。」に現れているように感じています。
――大鵬薬品の社員として「いつもを、いつまでも。」をどう実現していきたいと思いますか?
高垣 個々の患者さんにとってより良い治療を届けることができるよう、大鵬薬品としてさまざまな形で貢献し、進化を続けたいと思います。また、医薬本部では「一人一人の患者さんにフォーカスした情報提供」に取り組んでいます。会社一丸となって、患者さん一人一人に合った治療が提供されるようなサポートを介して「いつもを、いつまでも。」を体現していきたいと思います。
患者さんは医師という“窓”を通して自分の治療を選び、向き合うことになります。でも、その“窓”の裏には、治療にお役立ていただけるかもしれない薬剤や情報を届ける私たちもいます。その患者さんに合った薬剤が選択されることの一助となれるよう、“窓”の裏から私たちは呼びかけ続けたいと思います。これからも、患者さん一人一人をイメージして情報を届けていきます。