信頼性保証本部

患者さんが安心して使える医薬品を届けるため、品質の信頼性保証と、規制・法規遵守のクオリティカルチャーを根づかせるのが使命です。

左から順に
逢坂 理絵(信頼性推進部 監査一課 課長補佐)× 宮崎 弘基(PV部 PSM一課 係長)
× 太田 美穂(薬制部 薬事管理課 課長補佐)

さまざまなアプローチで医薬品の信頼性を担保する

――皆さんが所属する信頼性保証本部はどのような部署なのでしょうか。

宮崎 製薬会社には医薬品の品質と情報の“適正な質”を患者さん、医療従事者をはじめ、すべての人びとに保証するという重い責任があります。この責任を果たすため、さまざまな法律や基準を遵守して薬を創っていますが、しっかり遵守できているかどうかをさまざまなアプローチで確認することで、「モノの品質・安全」とそれに関する「情報の品質」を保証する、それが私たち信頼性保証本部の役割です。

――なるほど。ではそれぞれの業務内容について詳しく教えてください。

宮崎 私はPV(ファーマコヴィジランス)部に所属し、薬剤に関する安全管理情報(適正使用のために必要な品質や有効性および安全性に関する情報)を集め、どうしたら薬剤を適正に使用できるか、副作用を最小限にくい止めることができるのか、などを検討する仕事に従事しています。

例えば、有効性が極めて高いと言われている薬剤でも、重篤な副作用が出てしまったら、患者さんにとっては薬剤による恩恵より、副作用によるリスクが上回るおそれがあります。そのようなことにならないよう、どのような有害事象がどのようなタイミングで発現するか、該当薬剤や併用薬との関連性はあるのかなどを調べ、その薬剤のベネフィットとリスクを検討します。それによって得た情報は、より正しく安全に薬を使用してもらうため、MRや開発モニターを通して医療従事者に伝えます。

また、収集した情報をまとめ、厚生労働省へ報告したり国内外の提携販売会社へ情報共有したりといった業務もPV部の重要な仕事です。

太田 私の所属する薬制部は、医薬品などの承認取得にかかる対応業務をはじめ、承認された医療用医薬品を保険適用にするための保険償還業務、医薬品などを取り扱うために必要な許認可業務、コンシューマーヘルスケア製品のCMや広告物の点検・管理など、薬機法(※1)に関連した業務を行っています。また、昨今、大鵬薬品においては事業のグローバル化が進んでおり、海外パートナー企業との連携業務も担当しています。

その中で私が担当しているのは主に保険償還業務、コンシューマーヘルスケア製品の承認取得と広告の点検・管理業務です。

保険償還業務とは、承認された自社の医薬品を保険適用の薬にするための業務です。日本の場合、医療用医薬品の価格は、定められたルールに従って決定されています。特にその医薬品が新薬であれば、臨床試験データから得られた有効性や安全性などの評価をもとに、医薬品の価格が設定されることになっています。さまざまな段落に設けられたルールを全てクリアしてようやく自社の医薬品が保険適用の薬として使用できるようになるわけですが、その瞬間にこそ、まさに私は生命関連企業で働いているのだという使命感を強く感じます。

※1 薬機法:医薬品医療機器等法の略。医薬品や医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律

逢坂 信頼性推進部の主な役割は、大鵬薬品が取り扱う開発品、製品が国内外の関連法規・規制要件を遵守して業務が適正に行われているかを監査し、信頼性を保証することです。世界共通の認識でグローバルに信頼性を保証するためにGlobal Quality Management Committee(※2)の運営を通じた品質保証の枠組み(Quality Management System:QMS)が推進されています。そして、それらの窓口機能も担っています。信頼性推進部は、信頼性担保において最終局面をつかさどる要の部署だと考えています。

その中で私が現在、担当しているのは、PV(※3)監査です。監査では、社内・子会社・提携会社のPVに関する業務が欧州をはじめ各国の規制、業務手順などを守りながら行われているかを確認します。

監査によって改善事項が生じた場合、必要に応じてアドバイスを行います。もし仮に是正措置、予防策を立てないと同じことが繰り返されるような事象がある場合は、業務フローの改善を行ってもらいます。監査によって適切に対応・改善をはかることが重要であり、問題が起きる前に防ぐ、あるいは発生しうる問題を各部署や子会社などが自ら特定する仕組み(QMS)につながる、そこにやりがいを感じています。

※2 Global Quality Management Committee:大鵬グループ内で、製品を扱う会社の代表者などによって構成される組織。製品の品質や安全性に関する情報、グループ全体の活動が各国の規制および国際基準に準拠して行われているかの情報を収集し、そこから抽出した共通課題を改善するための方針について協議・決定している。

※3 医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出、評価、理解および予防に関する科学と活動

会社として患者さんのために守るべきものを守る

――信頼性保証本部ではご自身たちのマインドを象徴するような3つのキーワードがあるとうかがいました。

宮崎 ①規制・法令遵守②患者さんのために守るべきものがある③患者さんの笑顔のための縁の下の力持ち、の3つです。

製薬会社はただ単に薬を創って世に出して終わり、ではありません。その後もその薬の安全性を管理し、規制・法令に遵守しているかを常に注視し続けていくこともまた製薬会社の使命です。そのため、私たちPV部の社員は、臨床試験では把握できなかった安全管理情報の収集を続けているわけです。

薬害という言葉がありますように、薬によって障害が残った、亡くなられてしまったとなると、何のための薬だということになりかねません。薬が薬で無くなってしまわないよう、安全性を守ることが非常に重要です。だからこそ、副作用というネガティブな情報も隠さず、誠実にありのまま伝える。その上で、患者さんが安心して薬を服用でき、医療従事者が「こんな副作用が出る可能性がありますがそのような時はこのようにして下さいね。心配しないで相談して下さいね。」と患者さんに伝えてあげることにつながればと。私たちの業務はまさに縁の下の力持ち。患者さんを見えないところで支えているのだと自負しています。

逢坂 適正に使用されることで効果を発揮する医薬品は、高い信頼性が求められます。また、質の高い医薬品開発とともに、質の高い情報を患者さんや医療従事者の方に提供することは重要であり、製薬企業にとっての使命と考えます。そのため、医薬品の品質と情報の質を確保することは重要であり、国内外の関連法規や規制要件は絶対に守らなければいけません。すなわち関連法規や規制要件を遵守できているかを確認する監査業務を通じて、医薬品の信頼性を保証し、質の高い情報を患者さんに届けることは、私たちが患者さんに対して守るべきことと考えます。ただ、あくまで間接的に患者さんに情報を届ける仕事という点で、やはり縁の下の力持ちのようなポジションかなと思います。

高度な技術や専門的な知識があってこそ的確な監査が実施でき、信頼性を保証することができると思うので、セミナーに参加するなど自分のスキルアップを図るよう心掛けています。

太田 逢坂さんの言ったように患者さんのため、医薬品に対する法規制を遵守することは必須です。ですから、薬制部では基礎研究から承認されるまでのプロセス一つ一つが薬機法を遵守したうえで実施されていることを確認します。

承認が下りれば、その時点での品質や情報は保証されますが、宮崎さんのお話にもあったようにそこで終わりではなく、承認された医薬品の正確な情報を、MRを通して医療従事者に、さらにそこから患者さんに伝えていくということも非常に重要です。そういった点で自分たちは縁の下の力持ちになっていると思います。

一方で、「PITAS(ピタス)」や「チオビタ・ドリンク」など、大鵬薬品のヘルスケアカテゴリー製品の情報は、コンビニやドラッグストアの広告やポスター、CMなどを通して生活者に直接届きます。医療用医薬品よりもより幅広く、さまざまな人たちに製品の正確な情報をお伝えするため、広告表現を多角的な観点から、複数名で審査しています。


――万人に共通認識できる広告表現というのはなかなか難しいことですよね。

太田 その通りです。実際、同じ課内でも「ここまでは言ってもいいのでは」「いや、言い過ぎでしょう」といった具合に意見が分かれることもあります。また、こちらの意図とは異なるかたちで内容が伝わってしまい、生活者の方からご意見をいただくこともあります。正確に情報を伝えるための表現は本当に難しいと感じています。それゆえ、審査する際は、過去に使っていた表現だからといってOKにはせず、自分たちで見極めて判断するようにしています。

宮崎 私たち3人は同じ信頼性保証本部でも、それぞれ違う側面から大鵬薬品の医薬品の信頼性を維持し、保証する業務に携わっています。患者さんに高品質な医薬品を安定的に供給するためには、私たちだけでなく社員全員にクオリティカルチャー、すなわち、品質・法制遵守の意識を浸透させる必要があります。私たちの日々の取り組みがその一助になればいいなと思っています。

患者さんが少しでも快方へ向かって幸せな日々を過ごせるように

――皆さんのお仕事が、大鵬薬品が生み出す医薬品の信頼性を確保し、患者さんの安全性を守っていることがよくわかりました。そうした中で大鵬薬品のスローガン「いつもを、いつまでも。」をどうとらえているか、ぜひお聞きしたいです。

逢坂 これまで仕事に携わる中で「いつもを、いつまでも。」について関連づけて考えたことはなかったのですが、今回改めてこの言葉を念頭に置きながら自分の業務を振り返ると、素晴らしいスローガンだなと実感できました。同時に私たちの日々の業務は、実はしっかりと患者さんの「いつも」につながっているのだと再認識できました。

太田 薬制部の業務を進める際、私はいつも患者さん目線を意識しています。私も今回、「いつもを、いつまでも。」について考えることで、自分たちの仕事が、患者さんに薬が届くまでのプロセスの一部を担っていることを再認識しました。

製薬会社として患者さんの治療選択肢を一つでも増やしたい、患者さんに元気になってほしい、少しでもより良い状態になって幸せな日々を過ごしてもらいたい。そうした大鵬薬品の想いが「いつもを、いつまでも。」に込められていると思います。

宮崎 このスローガンは私にとって初心を思い出させてくれる存在です。なぜ自分は大鵬薬品でPVの仕事をしているのか、そうだ、患者さんが「いつも」の状態で笑顔で過ごせるようにするためだった、では、何をすればいいのか、何をすべきなのかと。初心に返り、そんなことを考えることができました。

逢坂 コロナ禍になり、何気なく暮らしてきた日常生活が、実はとても大切だったと気づかされました。例えば、がんになると「いつも」の生活を送ることが難しくなる可能性があります。その場合、仮に大鵬薬品の経口抗がん剤によって、自宅で治療が可能であれば、「いつも」に近い生活を続けていくことにつながるかもしれません。そうなればありがたいと考えます。

その意味でも確かな品質を担保すること、適切な医薬品情報が患者さんに行き渡ることが重要になってくると思います。だからこそ、医薬品の品質と情報を監査し、信頼性を保証するという私たちの仕事は、患者さんの笑顔に貢献し「いつもを、いつまでも。」続くように安心して使っていただける、品質の高い製品、情報を届けていくために必要不可欠な仕事だと思います。

  • 「薬の副作用に関する情報は、誠実にありのままお伝えします」(宮崎)
    「正確な情報を管理し伝えるため、自分たちで適切な表現を見極めます」(太田)
    「的確な監査を実施するために、常にスキルアップを図るよう心掛けています」(逢坂)