これから10年、20年先を見据え、大鵬薬品として何をすべきか。患者さんに何を届けるかをイメージしながら製品ポートフォリオの方向性を日々考えています。
長澤弘透(経営企画部 ポートフォリオストラテジーオフィス 担当課長)
2022年1月から始動!会社の方向性を考える新セクション
――経営企画部とは、どのような部署なのでしょうか。
経営企画部は経営目標、実施計画などを立案する、いわば会社経営の中枢を担う部門です。2022年1月、経営企画部下に新設されたポートフォリオストラテジーオフィスに私は所属し、全社的なポートフォリオ戦略を考える業務に携わっています。
――ポートフォリオ戦略とはどのようなものでしょうか。
会社が手がける事業の組み合わせや製品構成をポートフォリオといいます。ポートフォリオ戦略とは、顧客ニーズや会社の持続的な成長を念頭に事業や製品の構成を俯瞰し、どのような研究開発・製造販売に会社の経営資源を投入していくかを考えていくものです。
――なるほど。では、以前から経営企画部に所属し、今はその中に新たにできた部署でポートフォリオ戦略に携わっているということでしょうか。
そうですね。私は2020年から経営企画部に所属し、会社の方向性を決めるポートフォリオ戦略に携わってきました。どのようなニーズがあるのかを探りつつ、その中で大鵬薬品としてどういう患者さんに向けてどんな医薬品を届けていくのがいいのか、を考えてきました。そこは今も同じです。
ただ、以前はポートフォリオを構成する自社開発品それぞれの戦略が中心であり、それをベースにリソース配分を管理するスタイルでした。プロダクトの開発を着実に進めるというポートフォリオマネジメントの観点ではそれも必要なことです。その一方で、ポートフォリオ全体として達成したい将来の目標にむけて、限られた資金や労力をどこに、どのように使うべきかを考える戦略機能の強化も求められています。そこで2022年に発足したのが、現在私の所属するポートフォリオストラテジーオフィスです。会社の将来像に向けて必要なポートフォリオを構築するため、社内だけでなく社外の開発品にも目を向けつつ戦略的な開発品の取捨選択や投資配分を提案する専属チームです。今はその中で、ポートフォリオ戦略に携わっています。適切なポートフォリオバランスを構築・維持していくためにはポートフォリオ管理も必要で、その点についてはポートフォリオマネジメントオフィスが担当しており、連携して業務を行っています。
オンコロジーを軸に、他の領域でもどのような可能性を切り開いていくか
――大鵬薬品は抗がん剤が主力ですが、将来的に抗がん剤の可能性をさらに切り開いていくのが良いと考えておられるのでしょうか。
それを今まさに考えているところです。確かに大鵬薬品は、これまで主にオンコロジー領域に注力してきました。でも果たして今後もオンコロジー領域中心でいいのか。大鵬薬品が着手するとしたら、他にはどんな領域がいいのかなど、さまざまな可能性を探っています。
そのため、オンコロジー領域にこだわらず創薬でかなえたいことを研究所の仲間にヒアリングしたり、自社の研究所にはない技術や知見の中にも大鵬薬品として取り組むべき可能性があるかどうかを把握するため、ベンチャーキャピタルへの投資やコラボレーションなども進めたりしているところです。
――大変そうですが、今の業務のどんなところにやりがいを感じていますか?
大鵬薬品が今後、何を患者さんに提供していくべきかという方向性を決定づけるという会社の根幹に関わることができている点です。
経営企画部への配属前には、MRや学術担当として、またマーケティング部門で他社との提携品を担当するプロダクトマネージャーとして、薬剤の有効性・安全性情報を医療現場へ届ける仕事を経験してきました。プライベートでは父のがんとの闘病を支えていた時期もあります。それだけに具体的な患者さんがイメージでき、かつ、データでは計り知れない、抗がん剤の価値を実感しながら、ポートフォリオ戦略に向き合えることが自分の強みだと思っています。
自分の心にしっくりくるスローガン。常に戦略のベースに
――では、大鵬薬品のスローガン「いつもを、いつまでも。」を、ご自身はどのように受けとめていますか?
実は、私は以前からこのスローガンが大好きで、大切にしています。戦略を練る上で「では、何を届けたいのか」と考えるとき、真っ先にこのスローガンを頭に思い浮かべます。仕事だけでなく、プライベートにおいても何が大切かを常に思い起こさせてくれます。
――公私関係なく、常に「いつもを、いつまでも。」が長澤さんと共にあるわけですね。
そうです。「いつもを、いつまでも。」は、私たち大鵬薬品が提供している価値にしっかりとつながっているスローガンだと感じています。
例えば、大鵬薬品が取り扱う抗がん剤の多くは経口剤です。どの剤形がベストであるかというのは一概に言えないのですが、点滴の注射剤の場合、医療関係者による管理のもとで投与可能な反面、投与に時間がかかることがあったり、入院が必要になったり、注射の際に痛みが生じることもあります。それが経口剤であれば、ご自身やご家族などによる管理が必要になりますが家で治療ができる、つまり、少しは普段に近い生活ができる。このように実際の患者さんのメリットにつながっているわけです。
そもそもどんなに健康に生きていても、誰にでも死は訪れます。だから、「いつまでも。」は「フォーエバー(永遠)」ではないのです。それでも「いつまでも。」が続くといいねと願う気持ちが大切なのだと、このスローガンが優しく語りかけてくれているような気がします。
――では、そんなご自身の想いにもつながる「いつもを、いつまでも。」を社会にどう伝えていきたいですか?
「薬を通じて、患者さんにいつもどおりの生活を届けたい」という、大鵬薬品の想いがそのまま伝わるといいなと思っています。
「いつもを、いつまでも。」は、決して会社のイメージ戦略だけのための言葉ではなく、大鵬薬品が世の中に出している製品にしっかりとつながるものがあります。今回、このスローガンのことを改めてじっくり考えたことで、ますますその想いが強くなりました。
――まだ、立ち上がったばかりの新セクションで、「いつもを、いつまでも。」を軸にポートフォリオ戦略をこれから考えていくところだと思いますが、最後に今後の抱負を聞かせてください。
最初から素晴らしい戦略を生み出すのは難しいのですが、少なくともこういう感じで前へ進んでいこうという方向性をしっかり示し、全社員に認識してもらえるようにしたいと思っています。反対意見も聞き入れ、違うと思ったら軌道修正しつつ、一歩ずつ前進していくようにしたいです。
また、戦略を考える際、どうしても「こういう部分が駄目で」といった具合に、マイナス面に目がいきがちですが、私は戦略には常に何かしら可能性を見いだす前向きな姿勢が大事だと思っています。考えがぶれないよう「いつもを、いつまでも。」を軸にしながら「大鵬薬品にできることは何だろう」「他社と比べて大鵬薬品にしかできないことは何だろう」を探り、自分たちらしい価値をしっかり見定めて患者さんに提供していきたいです。