事業開発部

世界中の患者さんが自分らしく生きられるよう、社内外の人たちとコミュニケーションを取りながら、さまざまな方法や可能性を探っています。

河浪勇気(事業開発部二課 係長/弁護士)

世界中の患者さんに新薬を届ける確率を上げるために必要なライセンス契約

――事業開発部とは、どのような部署なのでしょうか。

事業開発部では、企業戦略の大きな軸となる戦略的なライセンス契約の交渉と締結、その後のアライアンス(提携)業務などを行っています。

ライセンス契約の交渉とは、医薬品・医薬品候補化合物の開発権や販売権に関して他社との提携を検討する業務になります。例えば、可能性を感じつつも、自社では研究開発していない医薬品・医薬品候補化合物の権利を他社から獲得することがあります。これを医薬品業界では「導入」と言います。逆に、自社だけでは販売が難しい国に薬を届けたい場合や自社で開発費をすべて賄うのが難しい場合などは、他社の専門性や力を頼るため、自社の薬の開発権・販売権を他社に許諾することがあります。これは「導出」になります。この導入と導出がライセンス契約の柱になります。

――ライセンス契約を行うメリットは。

もちろん、自社だけで研究開発する医薬品もありますが、他社の力を借りないと創れない薬があるのも事実です。ライセンス契約によって、他社から使用を許諾された医薬品候補化合物や技術を使うことで、従来の創薬では困難とされていた治療標的を含め、大鵬薬品の創薬研究を大きく加速できる可能性があります。新たな治療薬の開発にも貢献できます。

逆に、大鵬薬品で大切に育成してきた薬の開発権・販売権を他社へ導出することで、さらに多くの患者さんたちに私たちの薬を使っていただける機会が広がる、それが何よりのメリットです。

――導入、導出を行う提携先はどのような視点で選んでいるのでしょうか。

薬の価値は製薬会社において非常に大きなもの。それだけに提携先の選定はかなり慎重に進めます。パートナリングといって、提携候補先の情報収集、機会探索のための面談を実施したり、国内外で開催される医薬系のイベントに参加したりします。そうした中で導入したいと感じる薬剤や技術があれば、科学的な観点、市場性や事業性の観点、さらに社会的意義や大鵬薬品の戦略とマッチしているかといった観点で評価します。その後、その会社と具体的な交渉に入る流れになります。

導出に際しても、同じような観点で提携先を探索するわけですが、それに加えて資金力はもちろん、薬剤を開発する能力があるのか、グローバルでの権利を導出する場合は世界市場での販売能力があるのかを見極めます。何より、私たちが育成してきた薬剤を大事に取り扱ってくれるか、そして患者さん目線で薬剤を育ててくれるかどうかも大きな判断ポイントになります。

チーム一丸となって自社の薬を世界に届けられる喜びがある

――事業開発部のもう一つの大事な業務、アライアンスについても教えてください。

実際に締結したライセンス契約に基づいて、提携先との関係を良好に維持していくための活動です。締結時には想定していなかった新しい課題や、検討事項が出てきた時に、その解決法を提携先と話し合ったり、万が一トラブルが生じた場合は、その解決策を導き出したり、実行したりするのが主な仕事です。それぞれの提携案件に担当者がいて、私は現在、自分がライセンス契約の締結に携わった2社のアライアンスを担当しています。

――業務の中で心掛けていることは何ですか。

国内外、社内外問わず、実に多くの方々とやりとりをする機会が多いのですが、信頼関係を築くことが第一なので、円滑なコミュニケーションを心掛けています。こちらの要望を一方的に伝えるのではなく、相手の思いもきちんと受けとめる。そのためには対話を積み重ねることがとにかく大事です。

――事業開発の仕事で魅力に感じているところは。

法科大学院修了後、弁護士資格を取得したのですが、もともと自分一人の力で何かをするというよりも、チーム一丸となって何かを成し遂げる仕事に就きたかったので、人との関係を大切にする大鵬薬品を選んだ経緯があります。

ですから、事業開発部でさまざまな価値観、いろいろなスキルを持った人たちとチームになって一つの案件を進めていくことができるのは非常に楽しいですし、やりがいがあります。今の業務では社内の研究、開発、経理、法務、マーケティング、広報、営業など各部門と連携することが多いので、会社全体がワンチームとなって仕事を進めていく点にも充実感があります。

社員一人一人の心に自然に在る「いつもを、いつまでも。」

――今後、大鵬薬品で実現していきたいことは何ですか。

入社動機の一つに大鵬薬品のグローバル化の推進がありました。日本で創った薬や技術を世界中に届けたい。その想いは今も変わりませんし、私の大きなモチベーションになっています。特に途上国などは望む薬が手に入りづらい状況が続いています。そういうところに大鵬薬品の薬を届けられるようにするのも大きな課題です。

最近は世界の状況がどんどん変化し、医薬品業界だけでは解決できない新たな課題も増えています。それ故、全く違う業界業種との提携を進めていくことで、新たな課題の解決や、新領域のビジネスの検討提案もできるようにしていきたいです。

――日々の業務の中で、大鵬薬品のコミュニケーション・スローガン「いつもを、いつまでも。」をどうとらえていますか?

わざわざ意識しなくても、すでに大鵬薬品の社員全員がふに落ちているスローガンのような気がします。私自身も「何のために働いているか」を意識しなくても心掛けることができるのは、自分の根底にこのスローガンが自然に息づいているからだと思います。

日々の仕事の中ではまず、自分に与えられた機会を最大限に生かすべく、自分の能力や知識をより高めていきたい。その上で世界中の患者さんたちの「いつも」が「いつまでも」続くように何ができるのか、何をすべきなのかを考え、日々の業務に取り組んでいきたいと思っています。

――コーポレート部門だと、直接患者さんや医療関係者と接する機会が少ないと思いますが。

確かに患者さんや現場の医療関係者の声を直接聞くことは少ないのですが、実際の患者さんや医療関係者の声や現場を訪問しているMRの声を共有できる場が社内イントラネットに設けられています。そこで、患者さんたちの言葉を目の当たりすることで、自分たちの仕事の意味の重さ、深さを実感し、また頑張ろうという気持ちになります。

――今回、「いつもを、いつまでも。」を改めて考えることで、感じたことを最後に教えてください。

私が今、世界中の患者さんたちに新しい薬を届けるために、何をすればいいのかを思い起こしてくれるのが「いつもを、いつまでも。」です。

以前、在籍していた部署の先輩で、がんに罹患し治療をしながらも亡くなる直前までご自身の強い希望で仕事を続けていた人がいました。私の頭の片隅にはその人の姿がいつもあります。その先輩のように、病に罹患しても自分がやりたいことを少しでも実現し、自分らしく生きられるようサポートをするのが自分たちの仕事なのだと感じています。

大鵬薬品は優しい人が多い会社です。協力を求めると誰一人嫌な顔をする人はいません。互いを尊重しあえる社風の会社だからこそ、これからも部署や社内の仲間とともに世界中の患者さんに貢献できる薬を届けていきたいと思っています。